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2009年12月28日 配信
若き女王の愛と葛藤を活写(70点)
ケイト・ブランシェットがエリザベス1世を演じると聞いても、多くの映画ファンは特に驚かなかったと思うが、エミリー・ブラントがヴィクトリア女王を演じるというニュースには、多くのファンが首をひねったのではないか。ヴィクトリア女王といえば、イギリスを「太陽の沈まぬ国」に発展させた同国きっての名君である。対するエミリー・ブラントは、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープに奴隷扱いされていたアシスタントだ。あるいは『サンシャイン・クリーニング』で人生を投げていたフリーターだ。とても偉大な女王を演じる器とは思えなかったのだが……。
あにはからんや、このビックリ顔の若い女優が、意外に役柄にハマっている。偉大な女王とて、十代で即位する前は、周囲の思惑に翻弄される世間知らずの小娘だった。ブラントはそんなヴィクトリアの、我が身さえ思い通りにできないもどかしさや、“ゲームの駒”であるがゆえの孤独を巧みに表現してみせる。即位して初めて自由を得たヴィクトリアが、恐れと気負いを抱えながらも、自分と国家の運命を手探りで切りひらいていこうとする姿も印象的だ。