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スパイク・ジョーンズ監督4年ぶりの長編最新作として、6月28日(土)より全国ロードショーとなる「her/世界でひとつの彼女」。本年度アカデミー賞で自身初のオスカー獲得となる脚本賞を受賞し、約4年半ぶりに来日しているスパイク・ジョーンズ監督が、5月28日(水)Apple Store, Ginzaで開催された「Meet the Filmmaker」に登壇し、トークショーを行った。
実施日:5月28日(水)
場所:Apple Store, Ginza / 3F シアター(東京都中央区)
登壇者:スパイク・ジョーンズ(監督・脚本)、ケイシー・ストーム(衣装デザイン)
MC:野村訓市
【トーク内容】
MC: 本日モデレーターをつとめる、野村訓市です。今日はお越しいただきありがとうございます。これより映画「her/世界でひとつの彼女」公開記念「Meet the Filmmaker」をはじめさせていただきます。それではお呼びしましょう、スパイク・ジョーンズ監督、衣装のケイシ―・ストームさんです!まずは一言ずつご挨拶をお願いいたします。
スパイク: 今日は来ていただきありがとうございます。ドウモアリガトウ。みなさんのお役に立つことができれば嬉しいです。今日はケイシーも来てくれています。彼は20年来の友人であり仕事仲間です。彼がいてくれて心強いです。
MC: スパイクは「かいじゅうたちのいるところ」以来4年半振りの来日ですが、ひさしぶりの日本はいかがですか?
スパイク: 僕は日本に来ることがとても大好きです。昨日は野村さんとケイシーとカラオケに行ってきました。とても楽しんでいます。
MC: 来日してからどこかに行きましたか?
スパイク: 六本木や原宿など、日本のカルチャーは僕にとって未知なことが多いので、様々なところを歩き回りながら、デザイン性や日本独特のビジュアルを楽しんでいます。
MC: 日本で撮影されたこともあるんですよね?
スパイク: そうです。以前「ジャッカス」を撮影したんですが、秋葉原などいろんな場所をジョニー・ノックスヴィルと回りました。裸で踊りまくりましたね(笑)。そのシーンは文化的な理由でカットされてしまったんですが…。
MC: すでにマスコミの方々が本作を観ていますが、試写は毎回満席、スパイクの最高傑作と大評判です。いよいよ来月、日本で公開されることについてどう思いますか?
スパイク: 日本が最後の公開国だということは僕にとってとても特別です。こうして来日して映画を語れることにとても喜びを感じています。
MC: そしてアカデミー賞脚本賞受賞、おめでとうございます!
(会場から拍手が起きる)
スパイク: 君、無理やりやらせてない(笑)?
MC: 脚本執筆で苦労した点、こだわった点はどこですか?
スパイク: 全てにいえることですが、映画を作ることはとても大変なことです。大変な日もあれば、エキサイティングな日もあります。今回の物語はホアキンとスカーレットのラブストーリーですが、スカーレットは声だけで心や欲求、疑念を表現する必要がありました。2人の関係をきっちり描き切ること、これが今回一番大切なことでした。
MC: 初の単独脚本作品ですが、なぜ初めてラブストーリーを手がけようと思ったのですか?
スパイク: 僕が心惹かれる題材は、その時自分が疑問に思っていることなんです。脚本を書き始めた時は、リレーションシップ、人間関係に興味を持っていました。人とつながるというのはどういう事なんだろう?と考えていたんです。自分が面白いとか、不思議だとか思うことがきっかけですね。
MC: 人工知能型OSと恋に落ちるというストーリーを着想したきっかけは?
スパイク: 5年前に脚本を書き始めた時は、人とテクノロジーの関係を描きたかったわけではないんです。リアルに、誠実に、人と心を通わせるのはとても難しいことです。今、テクノロジーのせいで人と関係が築けないと言われていますが、昔だって別の事を言い訳に同じような事が起こっていました。コミュニケーションの形は日々変わるし、今は情報量も多いです。そんな中で人と親密になる事の挑戦を描くためのテーマでした。
MC: 主人公セオドアにホアキン・フェニックス、セオドアの一番の理解者であるエイミーにエイミー・アダムス、セオドアの元妻キャサリンにルーニー・マーラ、そして、セオドアの恋に落ちる相手サマンサにスカーレット・ヨハンソンと豪華なキャストが顔を揃えていますね。それぞれキャスティングした理由と経緯を教えてください。
スパイク: サマンサの役は30人以上オーディションして、これまでで最も難しいものでした。成長していく彼女を声だけで表現しなくてはいけないですからね。スカーレットは自分を持っていて、自分自身をよく知っています。それが彼女の魅力です。
MC: 一見現代と変わらないように見えて、よく見るとハイウェストなどとても印象的な衣装です。なぜ少し先の未来にこういったファッションを着想したのですか?
ケイシー: ハイウェストにした理由は自分でも説明が難しいです。たしかスパイクのアイデアじゃなかった?スパイクたちと最初にミーティングを重ねていた時は、具体的にどんなエモーションを求めているのか話し合いました。それをいかに衣装に反映させるかをね。
この映画は未来ではなく、過去にさかのぼって表現しています。セオドアという古典的な名前やハイウェスト、セオドアのひげなどは1920年代を意識してるんです。トレンドというものはある程度の周期で回っているんですが、この年代だけはなぜか戻ってきていないように感じていたので、この映画ではそれを意識しました。
子供や大人などたくさんの人が集まる場面では、子供や、お金持ちなど、それぞれの背景を持つ人々がどんな服装をするのかを考えて、100〜200人の方に並んでいただき、一人一人服装を確認しました。ですが、ストライプが多すぎたり奇抜すぎる人が多いように感じ、「やばい、やっちまった!」とスパイクに相談して、一緒に確認してもらいました。
確認が進むにつれスパイクは大笑いしてましたが、「いいよ!これで撮ろうよ!」と言ってくれたんです。奇抜になりすぎず、作品の世界観を崩さない美しい衣装になったと思っています。
MC: サマンサは、ユーモラスで、セクシーで、とても魅力的です。どうやってこのキャラクターを思いついたのですか?参考にした人はいるんですか?
スパイク: 今まで答えが長かったのでここは簡潔に、「ノー」です(笑)。僕はキャラクターに自分を投影させています。声だけのサマンサはどんな不安を抱えているんだろうと考えて寄り添うんです。それが正しいやり方だと思っています。
会場のみなさんから質問があれば答えますよ!
Q: 劇中、サマンサとセオドアの関係や心情は言葉だけで表現されていますが、そのアプローチに不安はありませんでしたか?
スパイク: 確かに大きなチャレンジでした。脚本の段階ではバランスよくしていても声でしか表現できないキャラクターがいる場合、均等さが必ず崩れます。僕はそのかわりに視覚的な言語をいれてみました。セオドアが傷ついているときや、何かを思い出しているときのアップの表情ですね。誰かがきっかけであっても、”傷ついている”というのは、自分の中で起きている事です。そういった感覚を捕まえるためのひとつの方法になったと思います。
Q: なぜタイトルが「She」ではなく、「Her」なんでしょうか?
スパイク: 日本に来てこの質問を他の方にもされたのですが、herはsheよりも親密な感じがするんです。セオドアの心の中、彼の視点で描かれているこの物語にはこの方がぴったりだと思いました。
Q: この脚本でいける!と思ったきっかけはなんでしょうか?
スパイク: これでいける、といった確信はどんな時もありません。いつも不安定な状態で始まります。映画を作る作業の中でうまくなっていくんです。きっかけがあって、キャラクターの想いがあって、だんだんと表現できるところにたどり着いていきます。全てが制作の一部です。そして、この物語ならみなさんと分かり合えるな、と感じたら、映画が完成するんです。
あ、昨日ケイシーが歌ったエミネムの曲、みんなが彼を乗せたら歌ってくれると思うよ!
<会場から大きな拍手が贈られ、ケイシーが激ウマなラップを披露>
MC: 盛り上がっているところですが、最後に監督からメッセージをお願いします。
スパイク: 今日はみんな来てくれてありがとう。とてもうれしいです。
ケイシーのエミネムも素晴らしかったね(笑)!