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8月6日(土)、テアトル新宿にて先行ロードショーの公開初日を迎えた「一枚のハガキ」。この日、99歳の新藤監督にとって、映画人生最後となる初日舞台挨拶が、これまで新藤作品に多数出演してきた“新藤組”の豪華キャストも登壇して行われた。
司会者:
それでは本日お越しいただいたお客様に一言ずつお願いいたします。
新藤監督(以下、新藤)
皆さん、今日はありがとうございました。映画監督の新藤です。どうぞよろしくお願いいたします。この映画は私が98歳で撮った作品ですが、自分の人生の終わりに「終わりの映画を一本作っておきたい」と思って、皆さんに集まって頂きました。私の力というより、皆さんの力が大きい。そんな作品です。
豊川悦司(以下、豊川):
俳優の豊川悦司です。今年は大きな震災がありました。原発の事故は未だに収束していません。今日8月6日は広島に原爆が落とされた日でもあります。この映画はそういう悲惨や痛みを乗り越えて、その先にある希望の光を描いている作品だと思います。皆様にもその“光”が数多く届きますようにお祈り申し上げます。今日はどうもありがとうございました。
大竹しのぶ(以下、大竹):
女優の大竹しのぶです。今日は本当にありがとうございます。新藤組でいつものスタッフと、ワンカットワンカット監督と一緒に作った映画をこうしてたくさんの方に観ていただけてとても幸せです。監督はすごく細やかに演出して下さって、すべての動きやセリフに指示を出してくださいました。監督の想いが劇場にお越しの皆様に、そして日本の人たち、世界の人たちに届いて欲しいと思います。
柄本明(以下、柄本):
新藤組“俳優部”の柄本明です。新藤兼人監督の最後の映画ということですが、この前「花は散れども」という映画を撮った時も、“最後の映画”ということで、主演は僕だったんですけれど、また今回“最後の映画”を撮られまして、主演はトヨエツになってしまいました(笑)。まだこれからも“最後の映画”は続くと思いますので、皆さんどうぞ応援をよろしくお願いいたします。本日はありがとうございます。
倍賞美津子(以下、倍賞):
新藤組“役者部”の倍賞美津子です。新藤監督とは「竹山ひとり旅」(77)という映画で出会いました。今回最後の映画で再びお会いできたことが非常に嬉しかったです。監督の作品に出ること自体に意義がある、オリンピックよりももっとすごい事だと思います。そして何よりこのようにたくさんの方にご覧頂けることがとても嬉しいです。本日はありがとうございます。
津川雅彦(以下、津川):
新藤組の“俳優部”の津川雅彦です。80歳の監督の時に制作された「?東綺譚」という作品がございまして、それが最初の“最後の映画”でございました。その時に撮影中毎日僕の目の前に立って、ご自分の戦争体験の話を聞かせて下さいました。それがもう面白くておかしくて、「戦争の話ってこんなに面白いのか!」と感動したほど監督のお話が上手でした。それが結局19年目に「一枚のハガキ」という映画になりました。語り口は明るくて、コミカルに、しかしながら、戦争の悲惨さも飲み込ませてくれる、そんな匠(たくみ)の腕を持ったプロ中のプロの作品だと思います。それを皆様にお送りできることは我々の誇りです。ありがとうございました。
司会者:
この作品は監督にとって<最後の作品>だそうですが、最後にこの題材を選んだのはなぜでしょうか。
新藤:
この作品のテーマは<戦争反対>です。何故戦争のようなバカバカしいことをやるのだと。私が体験したことを脚色し、監督をしました。
司会者:
では“俳優部”の皆さんに新藤作品に参加されてのご感想を伺いたいと思います。
豊川:
この壇上に、この場にいること自体が俳優としてとても光栄なことです。前作に続き、今回も呼んで頂けたことがとても幸せでした。二度あることは三度あるということもありますので、監督、これからもよろしくお願いします。
司会:
大竹さんは乙羽信子さんが亡くなった後、「生きたい」という作品から監督の作品に参加なさっていますが、監督との印象に残るエピソードはありますか?
大竹:
「生きたい」で出演させて頂いた時に乙羽さんの夢を見たんです。お身体の調子が良くない乙羽さんがセットで横になっていて、お金を出してくれるスポンサーの方がセットに見学に来たら、乙羽さんが立ち上がってお礼を言っている光景でした。このようにして乙羽さんは監督と支えあって映画を撮ってきたんだな、と夢に教えられました。「一枚のハガキ」のオールアップの時に20代の若いスタッフの女の子が監督に何か一筆書いてくれるよう頼んだんですけど、そこに監督は「生きているかぎり」と書かれました。それを見たスタッフは「私も生きているかぎり映画を撮り続けよう」と心に思ったそうです。監督も私もみんな、いつかはいなくなってしまうけれど、自分の信念や感じたことはずっと残っていくものだと思います。
司会:
では最後に監督から皆さんに一言お願い致します。
新藤:
これまで独立プロをやってこられたのも、本当に皆さんのおかげだと思っています。いつもつまずいていまして、つまづく度に額をぶつけ続けました。しかし、泣きたくても泣いてはいけない。前を向いて歩いて参りました。しかし、なんでも終わりがあるように、私にも終わりが参りました。私も皆さんとお別れです。しかし、今まで作った映画、映画に対する想いがありますから、「新藤はこのような映画を作ってきたんだ」と時々思い出してください。それだけが望みです。何を作ったか、なんという映画を作ったか。この映画は私だけではなく、皆さんと一緒に力を合わせて作った映画です。それを思い出して頂ければ、私は死んでも死なない。いつまでも生き続けます。
テアトル新宿、広島・八丁座にて先行公開中、8/13(土)より全国ロードショー!