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コーエン兄弟が描く真面目に生きる男の悲劇(85点)
『ライフ・イズ・ビューティフル』というタイトルの映画があるように、何があっても人生は素晴らしい。片や、人生ってものは最悪で、悲惨な出来事の連続でしかない。コーエン兄弟(ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン)の新作『A SERIOUS MAN』は後者を語る。これが本当のディザスタームービーと言わんばかりに、主人公の中年男に次々と災難が降り掛かるのだ。
映画は昔々のヨーロッパ、人々がイディッシュ語を話すとある村で幕を開ける。ある吹雪の晩、妻は夫を家に迎え入れる。夫は言う、「荷馬車の車輪が壊れてしまったが、ご近所さんが押すの助けてくれたよ」と。しかし、妻は言う、「ご近所さんは亡くなって、あなたが会ったのはさまよう魂かディバックよ」と。ディバックとは無傷の肉体に憑依する「火炎地獄」から召還した悪霊で、何としてでも避けなくてはならない。誰かが家の扉を叩く。扉を開けると先程夫を助けた老人だった。ディバックと確信した妻は彼の胸にアイスピックを突き刺す…。
そして、物語は飛び、舞台は1967年アメリカ中西部のミネソタ州・ミネアポリスの郊外。そこには中流階級のごく普通の家庭を持つ大学教授ラリー・ゴプニック(マイケル・スタールバーグ)がいる。大学では物理を教えている彼は、成績が悪く彼のクラスをパスする事が出来なかった韓国人の生徒クライヴ(デヴィッド・カン)から賄賂金を渡される。しかし、真面目なラリーは、その様な不正は断固拒否する。
ラリーには妻ジュディス(サリ・レニック)、娘サラ(ジェシカ・マクマナス)、息子ダニー(アーロン・ウルフ)がいる。しかし、家のソファで寝泊まりしている、精神的にも肉体的にも障害があり、自立出来ないラリーの居候の兄アーサー(リチャード・カインド)に痺れを切らし、妻は夫に離婚を申し出る。しかも、彼女は家族の良き友人であるはずのサイ・エイブルマン(フレッド・メラムド)という不倫相手がおり、彼と一緒になるため、ラリーには家を出ていって欲しいと告げる。既に人生大ピンチのラリーだが、この後更に彼は人生に翻弄されてゆく。