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是枝裕和監督「万引き家族」が、第71回カンヌ国際映画祭 ・コンペティション部門に正式出品されたことを受け、是枝監督、リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林、城桧吏、佐々木みゆの7名がカンヌ入りし、13日夜(日本時間14日)世界の観客を前に公式上映が行われた。
レッドカーペットを歩く前にインタビューを受けた是枝監督は、カンヌについて問われると「何度来ても幸せな気分になれる。帰ってこれて嬉しい」とコメント、今作のテーマについては「社会と家族の接点を描こうと思う中で、社会性を強く出したつもりです。それもあって『万引き』という言葉がタイトルにも入っているのが、すごく印象的だなと思います」、是枝監督の家族の像というのは進化してみえるという意見については「進化しているというのはよく分からないけど、血縁だけではない繋がりを求めた人たちの話というのをどうしてもやりたかったので、『そして父になる』以降に自分が向かうべきテーマだと思ってましたから、そういう意味では自分の中では一歩先へ進めたつもりではいます」と回答した。
2200席の会場は満席、万雷の拍手で迎えられ、上映後は約9分間にも及ぶスタンディングオベーションで観客から賞賛を受けた。毎回監督に帯同するスタッフからは、こんなに盛り上がって温かいスタンディングオベーションは初めてといった声もあがるほど。
その後は、日本のメディアに向けた囲み取材が行われた。
【日本メディア向け囲み取材】
Q:作品への反応に対する手ごたえは?
是枝監督: 出来上がって間もないので、なおしたいところはないかというのを確認しながら観てるような状況ではあるんですが(笑)ただ、2時間緊張感失わずに作れたなと思っていたのでちょっとホッとした部分と、終わった後の拍手が夜中にも関わらずあんな風に温かくそして長く頂けたので本当によかったと思います。
樹木: わたしも監督と同じ気持ちです。
リリー: 改めて大きなスクリーンで観てまた今までと違う感想が浮かびましたし、監督が仰っているようにまだ撮影から間もないので、今回はやっと観る側の立場として観れた気がするのですが、改めて素晴らしいと思いました。最後頂いた拍手とか、お付き合いでしているのではなく、みなさんの表情から本当に想いの入った拍手だと感じたので、すごい良い経験をさせていただきました。
安藤: わたしも今日(観るのが)2度目なんですけど、自分が出ていることも考えずにいち観客として映画に集中して観てました。カンヌの大きなスクリーンで、隣で監督と一緒に観ることにちょっと緊張しつつ、上映後は大きな拍手を頂いて、あの盛り上がり方を受けて、なんという作品に参加させてもらえたんだろうとまだその興奮が冷めていない状態です。
松岡: 私は初めてカンヌ映画祭に連れてきてもらいましたが、観客のみなさん正装で劇場もとても大きく、大人数の中で一緒に映画を観るという体験がすごく新鮮でした。そういう空間だからか一体感もあり、この大人数の方々が同じ時間でこの作品について色々なこと考えているんだろうなと思うと、素敵な時間でした。
Q:賞への手ごたえは?
是枝監督: 意気込みとか手ごたえという質問が一番答えにくいので、いつもなるべくはぐらかしていたんですけど…。それ以上言えないんですけど(笑)でも、客席との一体感もある良い上映だったと思います。
Q:伝えたかったメッセージはカンヌで伝わったと思うか?
是枝監督: 意気込みと手ごたえというのと同じくらいメッセージというのが答えにくい質問でして(笑)。でもまぁ、“血を越えて繋がる家族というのがありうるのか”というのを自分なりに考えながら作った映画です。今日一日取材を受けていた13人くらいの記者の内3人くらいは実は自分が養子でという方がいて、すごく切実なんですよ。血縁がなくても家族をつくることはできるのかということが。この映画はある種特殊な家族を描いてはいますけど、メッセージかはわかりませんが、根底に流れている問いかけみたいなものは普遍的なものがあるかもしれません。
Q:カンヌ来てやろうと思っていることは?
樹木: 特にないです。雨が降ってとてもよかったなとは思います。いつもお天気でカンヌってそういうところだって思ってたから。土砂降りになって雷が鳴ってたんですけど、日本から飛行機に乗っているとき、わたしの席に雷が落ちて、天井が壊れたんです。客室乗務員にすごい剣幕で酸素マスクをつけろって言われたりしましたけど、事なきを得てツイているなと思って、嬉しかったです。
リリー: 以前来た際は、着いてから帰るまで一回も雨が止まなかったので、こんな天気の良いカンヌは初めてで、散歩もしましたし、時間にも余裕があってカンヌ自体を楽しめました。
安藤: うちの母の兼ねてからの夢がいつか誰かにカンヌに連れていってもらうことだと小さいときから聞いていて、今日は母の日ですし、ここはいっちょ親孝行したろって思いまして(笑)母を連れてくることができました。まさか末っ子の私が、やっと母の夢を叶えてあげることができてよかったなと思います。
松岡: カンヌは、はじからはじまで歩いて3、40分でいけると聞いていたんですけど、道が東京とは違ってデコボコしていて半分くらいしか歩けなかったので、明日は遠くに歩いてみたいと思います!
Q:カンヌ映画祭はどんな意味を持つか?
是枝監督: 自分が関わっている「映画」という仕事を、もう一度背筋を伸ばして見つめなおす場所です。
樹木: 私は、後期高齢者なんでだいたい何も感じなくなってきてしまっているので。
リリー: 僕は華やかなところがそんな得意ではないんですけど、華やかなんだけど映画好きが集まっているということもあるのか、僕にとって心地良いものに感じています。
安藤: とっても難しい質問で…というのも、母の夢だったりとか、小さいときから自分の家族も映画でいつかカンヌにというのを夢みてきているので、わたしの夢とか憧れというよりももっと違う場所にある高い山で、そこにひょいと監督に連れてきてもらっちゃったという感じなんです。またカンヌ国際映画祭というものが私にとってきっと形が変わるんだろうなって思っていて、なので今は一言では言い表せないです。でも今回来ることができて、今この話をしていて胸がグッとくるようななんとも言えない気持ちです。
松岡: カンヌのきれいな街並みを歩きながら思い出したのが、オーディションのときにちょっと年齢が今回の設定より若めだったんです。だから幼くみせたくて、ウェーブのかかった髪をストレートにして子供っぽくしていったんですけど、ストレートにしてよかったなって(笑)というのもあったし、わたしみたいに、飛びぬけて華やかなルックスじゃなかったりとか秀でたものがないひとも、チャンスとかラッキーとか奇跡ってあるんだなって思って。でもそれがチャンスとかラッキーじゃなくて、わたしが頑張りましたって胸を張って、ここにまた戻ってきたいなと思ったので、これからも頑張ります。
樹木: 今日こうやって良い状態で立っていますけど、いいだろうな〜って思っていた映画でも評判が星ひとつふたつだったりする後の反応もまたこれも味わい深いもの。(一同爆笑)でもね、今日のこの反応は監督のお陰だとつくづく思いますので、監督にお礼をいってこの場を締めさせていただきたいと思います。(一同笑)
6月8日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー