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世界的巨匠アミール・ナデリ監督作品、西島秀俊3年ぶりの主演最新作「CUT」が、8月31日に開幕した第68回ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門オープニング作品としてワールドプレミア上映された。
上映前にはレッドカーペットにアミール・ナデリ監督、西島秀俊、そして共演の常盤貴子が登場。 黒で身を固めた西島は北野武監督「Dolls ドールズ」以来、9年ぶりのヴェネチア映画祭参加だが、「今回は楽しんでいます」と余裕を見せると、シースルーのロングドレスに身を包んだ常盤貴子は初めての三大映画祭参加で緊張しつつも、映画祭の雰囲気を楽しんでいる様子。
上映終了が23:00を過ぎるにも関わらず会場は満席。上映後の拍手は鳴りやまず、スタンディング・オベーションは約10分間にわたり、企画から製作に関わっている西島は目を潤ませた。本作は、ヴェネチア国際映画祭に続き、北米最大といわれるトロント国際映画祭と釜山国際映画祭の出品も決定している。
西島秀俊
「Dolls」のときは、ヴェネチアは初めてで、よく分からないうちに終わってしまったのですが、今回は落ち着いて楽しむことが出来ています。撮影期間中は「誰とも口をきくな」という指示を監督から受けて、厳しい撮影をした作品が、ヴェネチアという場で満席のお客さんに受け入れてもらえて、感無量です。
常盤貴子
ヨーロッパの映画祭は初めてですが、街中皆が映画祭を楽しんでいる感じが、すごく楽しい。何よりも、観客の皆さんが、世界中から選ばれた私たちの映画を楽しみにしてくれている姿、見終わってなお、賛辞の言葉を頂けたことが、本当に嬉しかった。私をヴェネチア映画祭に連れて来てくだったナデリ監督に感謝します。
【作品概要】
秀二(西島秀俊)は売れない映画監督。いつも兄からお金を借りて、映画を撮っていた。しかしどの作品も商業映画として映画館でかけることさえできずにいたが、秀二は自分の作る映画を信じていた。
ある日、その兄が借金のトラブルで死んだという知らせを受ける。秀二は兄がヤクザの世界で働いていて、そこから秀二のために借金していたことを知り、何も知らずにいた自分を責める。兄のボスである正木(菅田俊)から、残った借金額を聞かされるが、金を返す当てもなく、途方に暮れる。そして彼は自らの身体を痛めつけること――殴られ屋をすることで借金を返す決心をする。殴られる場所は兄が死んだ場所でなければ、兄の痛みを一緒に感じなければ殴られる意味がない、と考えた秀二は、ヤクザの事務所内で、ヤクザの組員相手に仕事をする陽子(常盤貴子)と組員のひとりであるヒロシ(笹野高史)を巻き込みながら殴られ屋を始める。
殴られるたびに自分の愛する映画監督たちが撮った作品を想い浮かべる秀二。殴られても殴られても、映画への愛情と兄への後悔の思いが秀二を支える。しかし、莫大な借金を簡単に返せるわけもない。秀二は死を覚悟しているのだろうか。それとも、この試練を乗り越えることで愛する映画と兄に報おうとしているのだろうか……。
2011年12月、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
配給:ビターズ・エンド