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今年で8周年を迎えるドイツ映画祭が10月15日(木)から18日(日)、新宿バルト9で開催される。
「ドイツ映画祭2009」は、ファティ・アキン監督(「愛より強く」)の最新作、そしてベネチア国際映画祭審査員特別賞受賞作「SOUL KITCHEN」で幕を開け、カロリーネ・リンク監督(「名もなきアフリカの地で」)の7年振りの新作「冬の贈りもの」などの注目作の他、マレーネ・ディートリッヒに並ぶドイツの大女優ヒルデガルト・クネフの生涯を描いた「ヒルデ − ある女優の光と影」やトーマス・マンの代表作を映画化した「ブッデンブローク家の人々」、そして現在第一線で活躍する13人の監督たちがベルリンの壁崩壊から20年を期に集結して製作した「ドイツ2009」など、旬の作品を紹介する。
映画祭公式サイト
〔上映作品〕
1.『SOUL KITCHEN』
ファティ・アキン監督/2009年/99分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD
ドイツ映画界をリードする存在であり、『愛より強く』などほとんどの監督作が日本でも一般公開されているファティ・アキンの期待の最新作。アキンが生まれ育った都市ハンブルクに捧げた<郷土映画>であるだけでなく、初の喜劇作品としても注目される。主人公はハンブルクの下町で不人気なレストランを営む男。新しいコックを雇うとすっかり客層が変わり、店は嘘のように繁盛する。だが男が経営を弟にまかせ、ガールフレンドのいる上海に向かおうとしたところ、店は知人に乗っ取られてしまう……。本年のベネチア映画祭コンペ部門で初上映されて審査員特別賞を受けた。リラックスして楽しめる快作。
2.『ブッデンブローク家の人々』
ハインリッヒ・ブレレーア監督/2008年/152分カラー/1:2.35/ドルビーSRD
文豪トーマス・マン(1875-1955)が26歳の若さで発表した自伝的長編の映画化作品。T. マンが1929年にノーベル文学賞を受けた際にも、その根拠として『ブッデンブローク家の人々』が挙げられたこともよく知られている。19世紀なかばのハンザ都市リューベックを舞台に、町でも有数の名家とされたブッデンブローク一族が時代の変化とともに緩慢に没落していくさまが重厚に表現される。細部まで正確に再現された街並み、華麗な衣装、豪華俳優陣の演技などもお楽しみいただきたい、香り高き文学映画。
3.『赤い点』
宮山麻里枝監督/2008年/82分/カラー/1:2.35/ドルビーSRD
ヴェンダースら多くのすぐれた人材を輩出してきたミュンヒェン映画大学で最初の日本人学生として学んだ宮山麻里枝の鮮烈なデビュー作。東京の大学生、亜紀は一枚の地図に導かれて南独の田園地帯を訪ねる。地図に記された<赤い点>とは、18年前に彼女の家族が自動車事故にあった場所を示すものだった。偶然、事故に関係するドイツ人家族と知り合ったことから、もうひとつの物語がはじまる……。実話に基づいた、深い感動をもたらす作品。ホーフ映画祭ドイツ映画奨励賞、バイエルン映画賞新人プロデューサー賞を受けたほか、世界の多くの国々で絶賛されている。
4.『冬の贈りもの』
カロリーネ・リンク監督/2008年/129分/カラー/1:2.35/ドルビーSRD
『名もなきアフリカの地で』(01)でアカデミー外国語映画賞に輝いたカロリーネ・リンクが7年ぶりに世に送る待望の新作。裕福な家庭の息子が自らの命を絶つが、周囲の誰にもその理由がわからない。事実を受け入れられない母は、ある画家に息子と娘の肖像画を依頼する。絵が完成するまでの過程で、家族の誰もが心の空白を埋められずに苦しんでいること、画家も精神的に傷を負った人物であることが明らかとなる……。喪失感のなかで新しい人生を歩みだそうとする人々の感動的なドラマ。透明感あふれる映像が素晴らしい。09年ドイツ映画賞銀賞受賞。
5.『ドイツ2009 − 13人の作家による短編』
トム・ティクヴァ監督、ヴォルフガング・ベッカー監督他/2009年/151分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD
1968年の学生蜂起から40年、<ドイツの秋>から30年、<ベルリンの壁崩壊>から20年が経過した節目に当たるいま、トム・ティクヴァ(『ラン・ローラ・ラン』他)の呼びかけに応じ、映画界を代表する才能が<現在のドイツ>を表現するために結集した。『グッバイ、レーニン!』のヴォルフガング・ベッカー、『愛より強く』のファティ・アキン、『わが教え子、ヒトラー』のダニ・レヴィなど13人がそれぞれのスタイルで短編を撮り、ティクヴァの言葉によれば「万華鏡のような」刺激的な映画が出来上がった。あらゆる映画ファン、ドイツに関心のある方々には必見の記念碑的作品。
6.『ヒルデ − ある女優の光と影』
カイ・ヴェッセル監督/2008年/137分/カラー/1:2.35/ドルビーSRD
ナチ時代末期の映画界に彗星のごとくデビューし、戦後に世界を股にかけた華やかなキャリアを築いたヒルデガルト・クネフ(1925-2002)。ドイツが生んだ世界的スターという点ではマレーネ・ディートリヒに次ぐ存在である彼女の人生を忠実に追ったのが、この映画である。ナチ高官と恋愛関係にあったという事実が招くトラブル、米軍士官と結婚してハリウッドに渡ったものの仕事を得られない苦悩、母国での再度の映画出演と<スキャンダル女優>という悪名、その後つかんだ女優および歌手としての名声……。スターの栄光と孤独を人気女優ハイケ・メカチュが好演。
〔特別上映作品〕
『ネクスト・ジェネレーション ´09』
ユリア・C・カイザー監督、トビアス・ビルゲリ監督他
2008・2009年/95分/カラー・モノクロ/1:1.66、1:1.85、1:2.35ドルビーSRD
ドイツの若い映像作家たちによる、選りすぐりの短編映画集。ドイツでは映画監督志望者はまず映画大学に入学し、在学中に短編を撮ることからキャリアをスタートさせるのが通例である。国内の重要な映画祭では短編を上映するセクションが存在し、そこに選ばれて注目を集めることが成功への第一歩となるので、競争はきわめて熾烈だ。ここでは、本年のカンヌ映画祭でも上映されて高い評価を得た、ドイツの映画大学生による短編12本(アニメ4本を含む)。完成度の高さ、斬新さ、まぶしいまでの魅力が満載の作品。
『ラン・ローラ・ラン』
トム・ティクヴァ監督/1998年/81分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD
ドイツ映画に新しい時代が到来したことを強く印象づけ、監督トム・ティクヴァの名を世界にとどろかせた伝説的な名作。いますぐ大金を必要としているボーイフレンドを救うために、ローラが20分間、ベルリンの街を駆け回る。ティクヴァはその<20分間>を微妙に異なる三つのヴァージョンで提示し、アニメーションを入れたりフィルムの速度を変えたりといった革新的な技術を投入して世界の映画ファンを驚かせた。世界的ヒットの後、ティクヴァだけでなく主演のフランカ・ポテンテ、モーリツ・ブライプトロイも国際的な活躍を見せている。
『マーサの幸せレシピ』
サンドラ・ネッテルベック監督/2000年/107分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD
一流レストランのシェフをつとめる独身女性マーサの姉が急死する。姉の幼い娘と暮らすことになったマーサは、次第に仕事にすべてを賭けてきた人生を見直すようになる。セカンド・シェフとして雇われたイタリア人コック、マリオも彼女の世界観を変えてくれるのだった……。そんな心身の変化のプロセスを、女性監督ネッテルベルクはきめ細やかに、説得力豊かに描いて愛すべき作品に仕上げた。アメリカでも大ヒットを記録し、『幸せのレシピ』としてリメイクされた。主演のマルティナ・ゲデックはドイツ映画賞を受け、ドイツを代表する女優として主演作が続いている。