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クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿を『ノー・マンズ・ランド』ダニス・タノヴィッチ監督が映画化した『 美 し き 運 命 の 傷 痕 』の主演女優 エマニュエル・ベアールとダニス・タノヴィッチ監督の記者会見が3月3日に開催された。当日の会見の内容は以下の通り。
ダニス・タノヴィッチ(4年ぶり 2度目の来日):前作から日本にもう一度来るまで、4年かかってしまいました。次の作品は4年もかからずに来たいです。
エマニュエル・ベアール(2年ぶりの来日):これまで10〜15回ほど、日本に来ています。毎回、うれしいのは日本人の好奇心と色々なことに喜んだり、悲しんだりできる感性です。日本人全員がフランスに引っ越してきてくれればいいのに、と思います。
――タノヴィッチ監督は如何でしたでしょうか?
ベアール:辛い苦しみを演じる女たちにユーモアと笑いと命をタノヴィッチは与えてくれました。撮影現場はこういった話なので、過酷だと思われがちですが、とても楽しかったです。
――女性の心理を深く描いていますが、監督は女優陣からアドバイスを受けたりしたのでしょうか?
タノヴィッチ:確かに『美しき運命の傷痕』には女性が多いですが、女性も男性も同じ人間なので、感情は同じ、そこに差はありません。ベアールは本当に素晴らしいし、とても特殊な女優です。情熱的で、150%の力を持って現場に挑みます。この作品の女性たちにリアルを感じたとしたら、それは女優の力です。
――ご自身の女性としての肉体のパワーは何だと思われますか?160億円をCGにかけた『キングコング』よりも、『美しき運命の傷痕』におけるあなたの肉体のほうがパワフルだったものですから・・・。
ベアール:どうもありがとうございます。いくつかの映画に出演しましたが、私の出るシーンにはいつも特殊効果はありません。女優が出来ることは要求されるキャラクターを演じることだけです。カメラマン、録音、照明・・・、そして映画を作るためのお金を集めるプロデューサーなど、本当にたくさんの方がいて、成立するのです。私は『キングコング』は見ておりませんし、見たいとも思っていません。監督にしろ、私にしろ、作品ごとに2-3ヶ月間、カバンに荷物を詰め込み、同じところにいる、それが仕事です。
――キェシロフスキの遺稿であることにプレッシャーは感じましたか?
タノヴィッチ:プレッシャーはありませんでした。私は94年のサラエボで感じた以降、プレッシャーというものを感じたことはありません。今回、何故この企画を引き受けたかというと、自分では描けないまったく真逆の世界が描かれていたからです。遺稿を読んで、つくづくキェシロフスキは天才だと思いました。これほど深いところまで、女性の世界に入っていくなんて。
ベアール:残念ながら、キェシロフスキに会ったことはありません。作品とはシナリオに命と音を与え、肉付けするものです。キェシロフスキの脚本は構造が本当にしっかりしていた。でも、そこに付け加えていく必要があります。今回はダニスが肉付けをしていきました。完成作を見て、「これは紛れもなくダニスの作品だ」と思いました。
――3人姉妹を描くにおいて、こだわった点は何でしょうか。
タノヴィッチ:私にも子供が3人います。同じ家で同じものを食べ同じように育つのに、不思議と性格は違います。その違いを出したいと思いました。人間は差があるからこそ面白いものです。その姉妹について、『トリコロール』のようなことを考えました。ベアールは役柄・本人含め、赤以外のイメージは浮かびません。それだけ情熱的なのです。三女を演じたマリー・ジランは白と緑。無垢さの象徴である白と、若さの象徴である緑。彼女自身も自分のイメージをそのように思っていたようです。カリン・ヴィアールは憂鬱などの表現でも良く使うブルー、それが彼女の役柄のイメージです。でも、本当の彼女はまったく逆の人なので、彼女自身が思う、自分のイメージカラーは違うものでしょう。
――この役柄を引き受けた理由は何でしょうか?
ベアール:作品そのもの以前に、監督の目に惹かれました。そのあとにシナリオ、キャラクターに惹かれました。この作品は感情の動きの細やかさに感動しました。三姉妹には一つのルーツがあります。
子供のときに、父が不在で、それがために母もまた不在なのです。それからそれぞれが暮らすうちにどのように消化して再会するのかに興味を持ちました。
最後に皆さんに再度お礼を申し上げます。日本もそうでしょうけれども、フランスも映画界はマクドナルド化しています。その状況が悪い、アメリカが悪いとは言いませんけれども、その環境の中で、フランス映画や他の国の良い映画を配給するのは素晴らしいことです。また、それを伝えるために、この場にこれだけの方が集まってくださったことにも感謝いたします。
『美しき運命の傷跡』は4/8(土)〜、Bunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマにてロードショー。
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