「意図しない妊娠を抱えた少女は生きがいである刺繍に打ち込んでいく」
傾いた斜面の畑からキャベツを盗み出す少女。彼女の名はクレール。そのキャベツはウサギの毛皮と交換される。ウサギの毛皮は彼女の生きる糧である刺繍の材料となるのだ。職も不足した不況感に覆われるこの小さな町でクレールはスーパーのレジ係として働いている。実は彼女は妊娠をしているが、そのため太り始めた体を「抗癌剤のため」とごまかしている。父親である彼とは別れた。唯一の親友のリュシルとは手紙のやり取りを続けている。その手紙が唯一の彼女の不満や不安を取り除いていた。
ある週末に帰省したリュシルを訪ねるとそこにはリュシルの兄のギョームがいた。彼は2人乗りのバイクで同乗者を死亡させる事故を起こし、引きこもりがちの生活を送っていた。その死亡した男性の母親が刺繍職人のメリキアン夫人だった。彼女は息子の死後、落ち込んだ生活を続けていた。そんな彼女を慰めてはと友人に勧められ、クレールは彼女のアトリエを訪ね、そこで働くことになる。 |