「韓国発、『シュリ』で大きな注目を集めたスタッフが5年の歳月をかけて送り出すアクション大作!」
「冬のソナタ」などのTVドラマに端を発した現在(2004)の韓国映画の盛り上がり。日本で韓国映画がこれほどまでに大きな注目を浴びているのは、これが2度目である。最初の大きな盛り上がりは2000年に日本公開された作品『シュリ』が火付け役となった。韓国国内ではあの『タイタニック』の動員記録を塗り替え、日本でも大ヒットを記録したこの作品は、南北に分断された朝鮮半島を舞台に展開されるラブ・サスペンス作品だった。好き嫌いはともかく、エンタティンメントとしての韓国映画の存在を一般的に認知させた部分でもこの作品の存在は大きかったはずだ(カン・ジェギュ監督のこの『シュリ』以来の久々の新作『ブラザーフッド』も今年公開され、主演俳優を含め大きな話題となった)。その『シュリ』で脚色と助監督を務め、注目を浴びたペク・ウナウの初監督作品が公開される。それが今回紹介する作品『TUBE』である。
舞台は韓国・ソウル。ある犯行グループにより、ラッシュアワーの地下鉄が乗っ取られる事件が起きた。人質の総数は1300万人。車内には強力な爆弾が仕掛けられていた。犯行グループのリーダーは政府に恨みを抱く元国家機密諜報員。この元国家機密諜報員に対しては忘れようにも忘れられない恨みを抱く刑事がいた。刑事は乗っ取られた地下鉄にもぐりこむ。そして・・・・というのが、この作品のストーリーである。
この作品が初監督となるペク・ウナウは「かってないアクション映画を製作する!」というコンセプトを掲げ、企画から撮影まで5年という歳月(これは『シュリ』以降の期間となる)をかけて、作品を完成させている。費やした歳月とコンセプトが必ずしも内容に結びつくわけではないのだが、この作品の製作に関するスケールは並外れており、舞台を韓国映画史上初めてとなる地下鉄に設定したことから、本物そっくりの地下鉄のセットの再現(ここにかけられた金額は韓国映画としては破格の額だという)、セットにリアリティーを生み出すための特殊効果やCGの多用、空港での10分間の銃撃シーンのためにキンポ国際空港のロビー、ターミナル、ゲートなどを5日間封鎖しての撮影(もちろん、これも韓国映画史上初)、韓国ナンバーワンのアクション・武術指導監督である『シュリ』、『ブラザーフッド』のチョン・ドゥンホンが全てのアクション・シーンを取り仕切るなど最大限の力が注がれている。
出演は、韓国の若手スターとして日本でも人気が上昇中のキム・ソックン、『子猫をお願い』、『ほえる犬は噛まない』と印象的な作品が続くペ・ドゥナ、ペ・ヨンジュン主演のTVドラマ『愛の群像』など映画にTVにと様々な作品に出演する実力派俳優パク・サンミンなど。
2003年2月に韓国で起こり、多数の犠牲者を出した地下鉄放火事件を覚えている方は多いだろう。実はこの作品『TUBE』はその地下鉄放火事件から1ヵ月後の3月に公開が予定されていたのだが、事件のあおりを受けて公開が延期になっている(その後、6月に公開)。韓国メディアでは「大惨事を予見していた映画」などという取上げ方もされたらしいが、これはいい宣伝にはなったかもしれないが、決して名誉なこととは言えないし、正直、事件を予見していたわけでもない。ペク・ウナウ監督の「かってないアクション映画を製作する!」というコンセプトに合致したのが、たまたまこの地下鉄という設定だったのである。そういった点でもこの作品の最大の見所がアクションシーンにあるのは間違いない。空港での銃撃シーン、カー・アクション、地下鉄の暴走などとにかく見所満載である。それにプラスして、ふたりの男の宿命の対決、そこに女性への想いなども絡み、物語は緊張感を持ちながらスリリングに展開していく。韓国版『スピード』とも言われるこの作品の面白さをぜひ、劇場で味わってください。
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