「日本映画を俯瞰して観ることが出来るすばらしい企画“この監督、この一本。”(後期)編」
ちょうど今年(2004)の5月末くらいに取上げたラピュタ阿佐ヶ谷による企画上映“この監督、この一本。”(前期)。島津保次郎、今村昌平、川島雄三、伊藤大輔、岡本喜八、斉藤虎次郎、鈴木清順、マキノ正博、市川崑、家城巳代治、加藤泰、工藤栄一、蔵原惟繕、小林正樹、衣笠貞之助、中川信夫、野村芳太郎、豊田四郎、吉田喜重、古沢憲吾、神代辰巳、稲垣浩という22人の日本を代表する映画監督のこれはという一本を選び、上映したこの企画、毎日のように楽しみに足を運んだ方もいると思う。今回、この企画上映“この監督、この一本。”(後期)が上映されることになったので、取上げてみたいと思う。
前回も書いたが、少し前の映画や名作を定期的に特集上映している映画館、二番館、三番館(新作映画がロードショーが終わり、次にかけられる小屋ということでこういう
風に言われているのだろう)と呼ばれる映画館や名画座は時代の流れによりわずかな数が残るだけになってしまっている。皮肉交じりの言い方をすれば、そういった映画館に変わって隆盛してきたのが採算(そして環境)を重視したラインナップ
で勝負するシネコンなのである。そんな状況でも、復活した新文芸座と早稲田松竹、アクション・サスペンス映画中心の新橋文化、三軒茶屋の2館、ギンレイホールや大阪のトビタシネマなど腰が痛くなる椅子のところも多いけれど、独自のラインナップを打ち出して頑張っている名画座もある。ラピュタ阿佐ヶ谷もそんな映画館のひとつで、往年の日本映画を中心に独自のラインナプで上映している。“この監督、この一本。”というシリーズ企画はそんなラピュタ阿佐ヶ谷でもより独自の色の出た企画だと思う。こういうのは意図が明確な分、面白いのだ。これも前回の紹介の際に書いたが、前期のチラシに添えられた文章がこの企画意図を明確に伝えているので、改めて記載しておきたい。
− 街から名画座という場所が消えていく・・・。時代を彩った数々の日本映画に想いをめぐらせてみる。あの作品の、あの場面。今回は贅沢にも、ひとりの監督につきひとつの作品を、吟味、厳選しました。定番中の定番、隠れた傑作、フィルモグラフィーの中でも異色の作品、作家自身の特別の思い入れに満ちたもの・・・など、ラピュタ阿佐ヶ谷が贈るオリジナル・セレクション。異論反論ございましょうが、それも当然。人の数だけ“この一本”。何度も見たい逸品がたくさん存在するのですから。−
前期に続き、今回の後期で紹介される作品は24人の日本を代表する監督のラピュタ阿佐ヶ谷がセレクトしたこれはという一本。監督名をずらりと挙げていこう。吉村公三郎、内田吐夢、今井正、森一生、新藤兼人、谷口千吉、沢島忠、五所平之助、大島渚、久松静児、堀川弘通、石井輝男、篠田正浩、田中徳三、浦山桐郎、田坂具隆、山下耕作、山本薩夫、三隅研次、中平康、渡辺邦男、舛田利雄、熊井啓、清水宏、大好きでたまらない監督もいれば、名前だけは知っている監督、名前すらも知らなかった監督もいるだろうが、集められた作品の大半を占めるのは日本映画が全盛期であった1950年代から1960年代にかけての作品。そして映画館では、フィルムではめったにお目にかかることの出来ない作品群です。正直、なんでこの監督がもれたんだという意見もあるでしょうが、それはまたの機会に譲りましょう。日本映画を俯瞰することができるチャンスでもあるこの企画“この監督、この一本。”、東京近郊の方しか観られる機会がないのは残念ですが、ぜひ、劇場に足を運んでください。
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