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2010年12月07日 配信
トニー・スコット監督デンゼル・ワシントン主演の『アンストッパブル』に大興奮。黒澤監督の『暴走機関車』なんてもんじゃない。キアヌの『スピード』が甘く思える。これぞ一流のエンターテイメントだ。
冒頭からスピーディーなカット割に身を乗りだし、巧妙なアングルに早くも鼓動が高鳴り、わずか数十秒で、ムービー・ジェットコースターに便乗する。
ベテラン機関士デンゼルの見習いとして同乗するのは『スタートレック』で一躍スター街道を歩き始めたクリス・パイン。小生意気で切れやすいチンピラ風のあんちゃんが、デンゼルの男気に巻き込まれ、正義感を燃やしてゆく姿に惚れ惚れする。
暴走した貨物列車には空気に触れると爆発する溶融ガスが積まれている。
こんな危険な列車を動かしながら、怠惰な機関士はチェックを怠り、操作ミスを補うために線路の進路変更をしようと運転席を降りたのだ。とたんに運悪くギアはロウからハイに移動して、800メートルもの貨物列車は暴走し始める。
それをどう停めるのか、管制室の指揮官は、本社の役員たちの利益優先ボンクラ命令を無視して、デンゼルの勇気に賭ける。
時速100キロ以上のスピード感を表出するカメラワークと轟音に、足元から鳥肌が立ち上り、恐怖で悲鳴をあげたい衝動を何度も堪える。
トニー・スコットが作るサスペンスは、毎回奇抜で意表をつかれる。単なるサスペンスではなく人間模様と心理描写も細かく描き、管理社会への皮肉も込め、さらにセリフにウィットもにじませる。
彼が描いた最初の構成と絵コンテを、一度この目で見てみたい。
(Koz)