新着映画情報
2010年05月06日 配信
成海璃子と北乃きいの若手実力派2人が繰り広げる女子剣道の世界。他人と真っ直ぐに向き合い、ぶつかり合うことの大切さを描いた青春映画の佳作(78点)
ネット社会は一見、それまでより人と人とを簡単に結びつけるようになったと思える。だが実は、自分に都合のいいときに、都合のいい相手を見つけて、つながっていると思っているだけなのかも知れない。それはどこまで行っても自分が一方的に拡大しているだけで、他人と「関わっている」とは言えないのではないか。男女間の体の売り買いが恋愛とは違うようなものだ。友達、あるいは恋人同士で一緒にいても、お互いに向き合わず、自分の携帯ばかりを見ている人たちが増えている気がする。ネット社会は逆に、人と人との関係性を希薄にしている部分があるようにも思う。
本作の女子高校生たちは、実に美しく、真っ直ぐに向き合っている。その美しさが弁証法となって、映画そのものを引っ張っている。
剣道の中学チャンピオンで負け知らずの磯山(成海璃子)は、ある大会で「甲本」という無名の選手(北乃きい)に負けてしまう。磯山は「甲本」を追って同じ高校に進学するが、宿敵だと思っていた相手は、両親の離婚で「西荻」と名前が変わっていた。剣道も逃げてばかり。磯山は西荻を鍛えて、本当の力を引き出そうとする。
2人の少女は、どこまでも対照的だ。磯山には母親が、西荻には父親が家庭にいない。勝つことが全ての磯山と、勝ち負けにこだわらず剣道を楽しむことがモットーの西荻。2人はお互いに「足りない部分」を補完し合って成長していく。その過程で、磯山は自分の中に弱さを、西荻は強さを見つける。ここに描かれているのは、理想的な友情関係であり、ライバル関係だ。