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2010年04月20日 配信
ビートルズ登場以前のイギリス・ロンドンで、大人の世界に憧れる中流階級の少女を描く。主演のキャリー・マリガンの魅力と、少女の気持ちにぴったりと寄り添った演出で、新鮮で心を打つ作品となった(91点)
世間知らずの少女が、年上の男性とロマンチックな恋に落ち、大人の社会を体験していく。よくあるストーリーだが、魅力的なキャストで時代背景などを丁寧に描いて作ると、これほど新鮮で心を打つ作品になるのかと驚いた。
舞台は1961年のイギリス・ロンドン郊外。主人公は16歳の少女ジェニー(キャリー・マリガン)だ。おそらく中流階級に属するのだろう。オックスフォード大学への進学を目指し、成績は優秀だがラテン語だけが苦手。楽団でチェロを弾き、フランス文化に憧れている。雨の日、チェロを抱えて路上で困っていると、高級車を運転する男性デイヴィッド(ピーター・サースガード)から声をかけられる。少女はデイヴィッドのユーモアと柔らかい物腰、贅沢な暮らしぶりにすっかり舞い上がってしまい、やがて彼を愛するようになるのだが、待っていたのは苦い結末だった。
監督のロネ・シェルフィグが女性だからか。作品全体が、少女の気持ちにぴったりと寄り添って、離れない。少女の目から見れば、着飾った男女が酒と音楽に酔うナイトクラブは心躍るあこがれの場所だが、同時にどこか胡散臭く、書物に囲まれた独り暮らしの独身女性教師の世界は知的で立派はあるが、同時に牢獄のようにかび臭い。どちらの世界にも、少女は自分とは異質の「臭い」をかぎ取る。周囲の「臭い」を強調することによって、少女は無臭であり続ける。まだ何者でもない純粋性だけが、切なく浮かび上がってくる。