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9月28日より全国にて公開となった「そして父になる」が米・映画製作会社のドリームワークスによって、リメイクされることが決定した。ドリームワークスでは、これまでにも日本で大ヒットした「リング」をリメイクし、「ザ・リング」その続編の「ザ・リング2」を公開している。
このハリウッドリメイク決定に伴い、是枝監督が渡米し、27日(現地時間)にLAのドリームワークス・オフィスにてスティーヴン・スピルバーグとの対談が実現した。
スピルバーグ: あの作品は本当に素晴らしかった。非常に高いレベルでのエモーショナルな感動があり、5月に見て感動して、それから6、7、8、9と4ヶ月経っているのに、まだ同じハイレベルの感動が残っている。本当に素晴らしい。感動的で、カンヌで見てボクはボロボロ泣いていたんだけど、審査員室に入って行ったら、他の審査員もみな涙してたんだよ。リメイクさせてくれる決断をしてくれて感謝しています。
是枝: こちらこそ、スピルバーグさんが関わってくれること、とても嬉しいです。
スピルバーグ: あの子供たちはどうやって演出したんだい?どのくらい時間をかけた?
是枝: 脚本を渡さずに自由に演技させるというオーディションを3ヶ月かけて行って、撮影に入ってからは、それほど時間かけずに。彼らの台詞を説明して、彼らの言葉で話してもらう、というような演出方法で・・・
スピルバーグ: (嬉しそうに)ボクも同じだよ!ETの時にはそうやって子供たちを演出したんだ!最後の福山さんと2本の道を並行するシーンは素晴らしかった。あれは、ロケーションが先なの?それとも脚本に書いてあったの?
是枝: ロケーションを決めてから脚本を書きました。あの道には川の流れる音が聞こえて、それにとてもインスパイアされました。
スピルバーグ: だろ、ボクも自分のところにいる監督たちには、ロケーションは写真で決めずにきちんと自分の目で見ろと言ってるんだよ。それにしても、みんな役者もよかったなぁ。父親は二人ともよかったけれど、特にpoor father(とボクは呼んでるんだ*リリー・フランキーのこと)はよかったなぁ。彼は評判高い役者なの?
是枝: いえ、役者ではなくイラストレーターです。
スピルバーグ: へぇ、そうなの???素晴らしかったよ。
スピルバーグ: 日本映画で好きな監督は?
是枝: 成瀬監督です。
スピルバーグ: なるほどね。ボクも好きだよ。
是枝: 小津監督も好きですが、成瀬監督のほうがやっぱり好きかなぁ。
スピルバーグ: ところで英語で映画を作る気はないの?
是枝: 興味はあるけど、言葉ができないのでハードルが高いんですよ。
スピルバーグ: ボクの友人のチャン・イーモウは、英語を全く話さないけれど、クリスチャン・ベールの目を見て判断していたよ。大丈夫だよ、できるよ。
是枝: 勇気づけられました。がんばってみようかな・・・
是枝: シンドラーのリストの血の色はどうやって?
スピルバーグ: あれは、紫色なんだ。白黒映画は特殊な技術が必要で、紫色がより黒く見えるんだ。たとえば昔の映画だけど「ジャンヌ・ダルク」では白い壁を表現するのに、ピンクの壁にしていたんだよ。役者はシリアスな映画なのにピンクの壁を前にして演技するのはとまどったと思うけど。モノクロの映画自体既にLOST ARTだけど・・・(淋しげに)
是枝: 「そして父になる」のリメイクは、アメリカの文化にあわせて好きに作ってください。オリジナルのことはあまり気にせずに。
スピルバーグ: アメリカと日本とカルチャーは違うけれど、この作品のテーマは世界共通のものだから、いいものになるよ!
スピルバーグ: リメイク撮るときには、撮影現場に是非来てください!モニター横に座って指示を出してくれてもいいですよ。
是枝: 是非伺います!
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また、9月20日(金)よりスペイン・バスク地方で開催されている、第61回サン・セバスチャン国際映画祭にて、PEARLS(パールズ)部門に出品されていた「そして父になる」が、観客賞を受賞した。
今年、PEARLS(パールズ)部門に出品された作品は宮崎駿監督の「風立ちぬ」も入れて全部で16本となり、その中で「そして父になる」が1位に輝いた。本作の正式上映は21日に行われ、主演の福山雅治、是枝裕和監督が参加し、上映後熱烈なスタンディングオベーションで称えられた。投票は初回上映で観賞した観客によって行われ、10ポイント満点中平均8.470ポイントと最高ポイントをマーク。
<是枝裕和監督コメント>
映画祭に参加するまで観客賞があることすら知りませんでしたから、正直、予想外というか想定外なんですが、良かったです。知らせを聞いて、先週の上映後に劇場の階段に残って福山さんと僕に拍手を送ってくれたあの街の方々の笑顔が甦ってきて、なんだかほっこりと嬉しいです。審査員賞と一般のお客さんが投票で選ぶ観客賞って全く逆の評価だと思いますが、作品にとってはそれが何より価値があるかな、という気持ちです。
★サン・セバスチャン国際映画祭、「PEARLS」部門とは・・・
スペイン語圏最大の映画祭といわれる同映画祭の「PEARLS」部門とは映画祭や映画賞をにぎわせ話題となった、その年を代表するような作品を上映する部門。過去受賞作は、2011年「アーティスト」(アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優、衣装、作曲賞)、2009年「プレシャス」(アカデミー賞助演女優賞・脚色賞)などその年の映画界を代表するような作品が選ばれてきた。
★是枝監督作品の同映画祭出品は「ワンダフルライフ」「花よりもなほ」「歩いても 歩いても」「奇跡」についで5作品目。