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5月12日(水)、第63回カンヌ映画祭の開幕が、オープニング上映作品のリドリー・スコット監督「ロビンフッド」の出演者ラッセル・クロウとケイト・ブランシェットによって宣言された。
カンヌ映画祭史上初めて、映画祭オープニングセレモニーとオープニング作品が、フランス国内の映画館で上映された。イギリス人女優クリスティン・スコット・トーマスが司会を務めたオープニングセレモニーでは、コンペティション部門に参加する全作品のプロモーション映像を上映し、「俳優の眼差しと同じように、物語も永遠のものです。これから12日間、映画の永遠性を共に分かち合いましょう」とクリスティンは述べた。会場のルミエール大劇場に集った招待客たち、そして中継を見ていた映画ファンに、今年の審査員団9人のメンバー、そして審査員長であるティム・バートンが紹介されたが、自国で拘束されているイランのジェファール・パナヒ監督は欠席となった。
【ティム・バートンと審査員による記者会見模様】
Q: 審査員の方々に、何か指示を出したのでしょうか?
ティム・バートン: 指示を出すことなど決してないでしょう。映画の専門家というものは、先入観を持たないよう心がけているものですからね。この映画祭は開放性と思いやりの精神の中で始まり、この精神は私たちがこれから見るすべての映画の監督のためにあります。我々はこの旅で驚きを期待しています。大切なのは映画を感じることであり、作品について議論し、知的あるいは感情的なショットのどこに感動するのか見極めることです。私はこの映画祭におおいなる興味を持って取り組みます。我々は文化も国籍も違うグループですが、そこがおもしろいのです。願わくば作品に高い評価を与えることができますように。そしてストレスを抱えた不機嫌な9人のアーティスト集団にならずに済みますように。
Q: 審査されるのとするのでは、どちらが難しいですか?
ティム・バートン: 我々は上映される作品に対し、それぞれが持つ感受性と共に、良識を持つようにしています。我々がジャッジと呼ばれるべきか分かりません。ジャッジ(審査)されるのもするのも、簡単ではないのです。人はいつも審査されています。審査員のメンバーとしても審査されるでしょう。おそらくそれがもっとも難しいことになるでしょうね。ベストを尽くすしかありません。
Q: ベニチオ・デル・トロに聞きます。審査員を依頼された時、どのように反応されましたか?
ベニチオ・デル・トロ: ティエリー・フレモーが電話をくれて、審査員になる気はないか聞かれたんです。審査員長がティム・バートンだと教えてくれてね。これは絶好のチャンスだと思いましたよ。それから打診中のメンバーのリストを受け取りました。その中に長年崇拝してきた監督がいたんです。ビクトル・エリセ。彼の名前があるなんて信じられなかった。これでがぜん招待を受ける気になりましたよ。僕は古いファンのひとりです。スペインに行くたび、彼の名前をあちこちで出すんですよ。そのうち僕を呼んでくれるんじゃないかと期待してね。それが、ほら、このとおり!
Q: パルムドールの候補となるコンペティション部門に、女性監督がいません。これについてどう思われますか?
ティム・バートン: セレクションがどのように行われるか知りません。私に分かるのは、これまでの経験で企画の実現に携わる人たちのうち、半数は女性だったということです。映画作りをする時は、男性だろうと女性だろうとどこの国籍だろうと、ある種の友愛が存在するものです。
シェカール・カプール: 実のところ人は本来、男にも女にも同時になれるものです。両性を持っていなければ、アーティストにはなれません。
Q: ビクトル・エリスに聞きます。今年は大勢の映画監督がいますが、このカンヌに来て何を感じますか?
ビクトル・エリス: カンヌ映画祭のセレクションはいつも非常にバランスがいい。私が思うに、作品のセレクションはどれも両面の鏡のようです。片面は現代を象徴し、もう片面は未来の映画になるものです。どんなセレクションになろうと、このコントラストがあるからおもしろいんですよ。
Q: 審査員は女性2名、男性7名ですね?妥協策として女性陣に3票与えるつもりですか?ケイト・ベッキンセールとジョヴァンナ・メッツォジョルノに聞きますが、男性多数に対しどのように切り抜けるつもりですか?
ケイト・ベッキンセール: こういう状況には慣れています。たいてい女性より男性が多いものですから。ジョヴァンナの大ファンなので審査員を一緒にできて幸せだし、男性なんて怖くありません。まったく問題ないわ。こんなにすばらしいメンバーといれて光栄です。
ジョヴァンナ・メッツォジョルノ: 私も同じです。だいたい、この手の質問は興味ないんです。男性が何人で女性が何人なんて。この質問を聞いた時、よく理解できなかったわ。「ああ、そうね。ホントだわ。」と思ったくらい。こういうケースもあるけれど、重要なことじゃありません。大事なのは私たちはお互いを知らないということ。私の知らない人ばかり。だからこそおもしろくなるでしょうね。互いに知り合って、出会って。人間であることが大切なのであって、性別じゃありません。
ケイト・ベッキンセール: そんなに居心地が悪いようには思えないわ・・・。
【コンペティション部門】
「ANOTHER YEAR」
マイク・リー監督/イギリス/2010年
春、夏、秋そして冬。家族と友情。愛と慰め。喜びと悲しみ。希望と失望。友愛。孤独。ひとつの誕生。ひとつの死。時は流れる・・・
「BIUTIFUL」
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督/スペイン、メキシコ/2009年
死の影を感じ、愛を求め、子供たちを守り、自分自身を救うために戦う、シンプルだが複雑な現代社会に生きる男の物語。
「COPIE CONFORME 」(CERTIFIED COPY)
アッパス・キアロスタミ監督/フランス、イタリア/2010年
イタリア、トスカーナ南部の小さな村で繰り広げられる男と女の出会いの物語。男は講演にやって来たイギリス人小説家、女はフランス人のギャラリーのオーナー。どこでも、誰にでも起こりうる、普遍的な物語。
「DES HOMMES ET DES DIEUX」 (OF GODS AND MEN)
グザヴィエ・ボーヴォワ監督/フランス/2010年
アルジェリア山中のとある修道院、時は1990年代。8人のフランス人キリスト教修道士はイスラム教の修道士たちと共に平和に暮らしていた。しかし徐々にこの地に暴力と恐怖が根を下ろす。周囲の脅威が高まろうとも、修道士たちのその場に留まろうという決意は強まっていった・・・
「FAIR GAME」
ダグ・リーマン監督/アメリカ/2009年
CIA核拡散抑止部門エージェントのヴァレリー・プレームは、イラクで大量破壊兵器の調査を秘密裏に指揮している。夫で外交官のジョー・ ウィルソンは、ニジェールからイラクへの濃縮ウラン売却の証拠を持ち帰る任務が与えられる。ウィルソンはニューヨークタイムスの社説でブッシュ政権によるイラク戦争開始の正当な根拠について批判するが、その記事が論争を引き起こすこととなる。その直後、ワシントンの著名ジャーナリストがヴァレリーは実はCIAエージェントだと暴露する。エージェントとしての秘密を失い、海外にいる協力者たちが死の危機に瀕する中、ヴァレリーはキャリアもプライベートも失う。何年もの間米政府へ仕えたヴァレリーは、いま自分の名声とキャリア、そして家族を守るために戦うことを余儀なくされる。
「HORS LA LOI」 (OUTSIDE OF THE LAW)
ラシッド・ブシャール監督/フランス、アルジェリア、ベルギー、チュジニア、イタリア/2010年
アルジェリアの所有地を追われ、3人の兄弟と彼らの母親は離ればなれとなる。兄弟のひとり、メサウドは、インドシナ半島で軍隊に志願する。パリでは、アブデルカーデルがアルジェリア独立運動の指揮をとり、サイードがピガルのキャバレーやボクシングクラブで財を築く。1人の母親の愛を中心に決定づけられた彼らの運命は、自由のために戦う国民の運命といやおうなく交わっていく。
「LA NOSTRA VITA」 (OUR LIFE)
ダニエレ・ルケッティ監督/イタリア、フランス/2010年
ローマ郊外で、ビルの建設作業員として働くクラウディオ。愛する妻は3人目の子どもを妊娠中。幸せでのんびりとした生活を送っていた彼を、突然思いがけない悲劇が襲う。今までの暮らしは急変し、途方に暮れていたクラウディオ。彼の目の前に広がる不当な社会に怒り、生きるために立ち向かっていく。家族や友達の支え、そして子ども達の愛が彼の人生の賭けを成功へと導いてゆく。
「LA PRINCESSE DE MONTPENSIER」 (THE PRINCESS OF MONTPENSIER)
ベルトラン・タヴェルニエ監督/フランス、ドイツ/2010年
1562年フランス、シャルル9世の統治下にあり宗教戦争真っ只中であった。マリー・ドゥ・メジエールは王国の富裕な相続人の1人であり後に«傷跡»と歴史上呼ばれる若いギーズ公爵に恋をしていた。彼女は彼に愛されていると思っていた。父であるマルキ・ドゥ・メジエールは一家の繁栄を目論み、娘を面識のないモンパンシエ王子と結婚させる。シャルル9世はこの王子にプロテスタント弾圧戦争への参加を呼びかける。当時のフランスは虐殺と略奪に満ちており、若妻の身を案じた王子は遠いシャンピニィの城へ王女をシャバンヌ伯爵と共に疎開させる。王子はかつて自分の家庭教師であり友である伯爵にこの若き王女がいつの日か宮廷に戻れるように教育を頼む。シャンピニィでマリーは、今も愛するギーズを忘れようと努めた。しかし奇遇にも廷臣達がギーズと未来のアンリ3世となるアンジュー公をシャンピニィに滞在させることになる。モンパンシエ王子がマリーに会いに来たというのに。 そしてアンジューはこの王女に恋をしてしまう。同様にシャバンヌも彼女の虜である。王女は男達の激しく危険な情熱の的となるのだった。
「LUNG BOONMEE PALUEK CHAT」 (UNCLE BOONMEE WHO CAN RECALL HIS PAST LIVES)
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督/イギリス、タイ、フランス、ドイツ、スペイン/2010年
ブーンミーおじさんはひどい腎不全に冒され、田舎の家族のもとで終わりを迎えることにした。不思議なことに、死んだはずの彼の妻と失踪した息子の幽霊が現れ、彼を見守った。自分の病の理由についてじっくり考えながら、ブーンミーは家族とともにジャングルを通って丘の上にある洞窟まで出かけた。彼の最初の人生が始まった場所へ…
「アウトレイジ」
北野武監督/日本/2010年
「POETRY」
イ・チャンドン監督/韓国/2010年
ハン川を渡ったキョンギ地方の小さな街で、ミジャは中学生の孫と一緒に住んでいた。ミジャは風変わりで好奇心が強く、身なりに気を使うことが好きで花模様の帽子を得意げにかぶり、派手な服を着ていた。偶然にも彼女は地域の文化センターで詩の講座に参加することになり、人生で初めて詩を書いた。彼女はそれまで全く気をつけて見てはいなかった、見慣れた周囲の景色に美を求めた。いつも見過ごしていたものをやっと発見したようで、彼女はとても満ち足りていた。しかし、予想外の出来事が起こり、人生は彼女が思っていたほど良いものではないと分かってしまう。
「RIZHAO CHONGQING」 (CHONQING BLUES)
ワン・シャオシュアイ監督/中国/2010年
船長のリンは6ヶ月の航海を経て家に戻ると、25歳の息子リン・ボが警察に射殺されたと聞かされる。何が起こったのか追求していくうち、息子のことをあまり知らない自分に気づく。そして以前暮らしていた重慶に戻り息子探しの旅を始める。そして、留守がちな父親が息子の人生に与えた重みに気付かされる。
「SCHASTYE MOE 」(MY JOY)
セルゲイ・ロスニツァ監督/ドイツ、ウクライナ、オランダ/2010年
トラック運転手のジョージーの物語。ジョージーは商品を積んで故郷の町を出るが、道路で間違った方向に曲がるハメになり、へき地に出てしまう。彼は戻ろうとするが、やがて意志に反してロシアの村の日常生活に巻き込まれてゆく。ここでは暴力と生存本能が人間性や常識より優位に立ち、運転手の物語は袋小路へと進む・・・。
「SZELID TEREMTES-A FRANKENSTEIN TERV」 (TENDER SON- THE FRANKENSTEIN PROJECT)
コーネル・ムンドルッツォ監督/ハンガリー、ドイツ、オーストリア/2010年
遠い昔、この子にどんなことが起ころうか知るよしもなくある若い男が父となった。17歳となり、その息子ルディは長年住んでいた寮を出て、家族との再会を楽しみに家に戻る。だが母はもとより父親にも愛情を感じるどころか受け入れてもらえなかった。偶然の巡り会わせで、ルディは映画のオーディションに入り込んでしまう。映画監督は純真な彼の前で立ちすくみ、主役に抜擢した。だがしばらくするとルディの無邪気な意志に反し、悲惨な事件が起こる。殺人狂となるルディ。監督は一風変わったこの無口な男の子は自分の息子であると知り、同時に自分が創り上げた怪物であると気付く。監督は避けられない必然の運命として息子と共に残酷な道を共にしながら救いを求めてさまよう。
「THE HOUSEMAID」
イム・サンス監督/韓国
上流家庭のお手伝いとして働き始めたLee Euny。間もなく家の主人であるフーの愛人になってしまう。そうして家庭の崩壊がはじまった。
「TOURNEE」 (ON TOUR)
マチュー・アマルリック監督/フランス/2009年
元パリのテレビプロデューサー、ジョジャンは子ども、友人、敵、愛、後悔、すべてを捨て、40歳をゼロからやり直す気でアメリカに渡る。ところが彼はストリッパーのチーム「ニュー・バーレスク」を引き連れてフランスに帰ってくる。彼の夢はフランス、そしてパリでツアーをすること!町から町へ、ユーモアある出し物と女性たちの曲線美が男性だけでなく女性まで熱狂させる。安ホテルに陳腐な音楽、資金不足にも負けず、ストリッパーたちはファンタスティックで熱く盛り上がる奇抜な世界を作り出す。しかしツアーのフィナーレを飾るはずのパリのショーで、チームの夢ははかなく消える。ジョシャンの旧友の裏切りで、舞台が無くなってしまったのだ。パリへの帰還は彼の古い傷口をこじ開けてしまう・・・。
「UN HOMME QUI CRIE」 (A SCREAMING MAN)
マハマット=サレ・ハルーン監督/フランス、ベルギー、チャド/2010年
現在のチャド共和国。60代のアダムは元水泳のチャンピオンで、今はヌジャメナの高級ホテルで水泳のインストラクターをしている。ホテルが中国人オーナーに買収され、アダムは職を息子のアドベルに譲らなければならなくなる。このことにひどく腹を立てたアダムは、社会的な屈辱を覚える。国は内戦に苦しんでおり、反乱軍が政府を攻撃していた。政府は対抗して、国民に「戦争の準備」を呼びかけ、資金援助と、相手と戦える年齢の子どもを求めた。アダムは呼びかけに応じたため地区のリーダーから嫌がらせをされる。アダムにはお金もなく、頼れるのは息子だけ・・・。
「UTOMLYONNYE SOLNTSEM 2: PREDSTOYANIE」 (THE EXODUS - BURNT BY THE SUN 2)
ニキータ・ミハルコフ監督/ロシア/2010年
アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「太陽に灼かれて」(1994)の続編。