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映画「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」のマイケル・ムーア監督が11月30日(月)初来日し、東京証券取引所で来日記者会見が行われた。
<記者会見模様>
記者会見開始前に、本作の字幕監修をされた経済アナリスト森永卓郎さんより前説。
〔森永〕
なぜ私がここにいるかと思われるかもしれませんが、この映画の字幕の監修をさせて頂きました。私が選ばれた理由としては、マイケル・ムーア監督と思想が似ていることと、体型が似ているという説があります(笑)。私はずっとマイケル・ムーア監督のファンで今まで映画を観てきたのですが、最高傑作と言っても間違いはないと自信を持ってオススメしたいと思います。私はこの作品を20回ほど観ましたが、何が素晴らしいかというと金融資本主義のドロドロの悪をこれだけ明確にスパッと切り取って見せた映画は今までにないと思います。
日本を映画の中で賞賛しているのですが、今日本も構造改革で同じ状況になっています。だから、日本の不況の原因は何なのかについてはこの映画を観て頂ければわかるかと思います。是非、監督のコメントを楽しんで下さい。
〔監督〕
今日はお越し頂きましてありがとうございます。今日は私にとって日本滞在の最初の日になります。常々日本に来たいと思っていましたが、なかなかその機会に恵まれませんでした。日本がもう少し北米大陸に近付いてくれればと思っていたのですが、その夢が叶いませんでしたので、私が飛行機に乗ってくるしかありませんでした(笑)。
飛行機ということでお話があるのですが、実はなぜ私がこのような変な格好をしているかと言いますと、昨日残念なことに私の荷物が積み残しにあってしまいました(笑)。飛行機の中で着ていたTシャツしかなく困っています。
ちなみに航空会社は日本の2社の内の1社で、Jから始まってLで終わる会社です(笑)。ただ、私のような体形ではなかなか洋服を見つけるのが難しく、相撲力士用のお店で色々と買った服で来ておりますので、今日はご了承下さい。という言い訳をしても、普段とはあまりかわらないかなと思っています(笑)。
日本の第一印象については、まだ24時間も日本にいないのですが、みなさんとてもフレンドリーでナイスな方々だと思っています。とても歓迎されている気持ちを強く感じます。
ただ、昨日空港のカウンターで指紋を取るように言われたのですが、55歳になるまで指紋を取られることがなかったので、「なぜですか?」と質問したところ別室に連れて行かれ、「任意で指紋を取るか国外退去のどちらかです。」と言われたりと、空港で一悶着ありましたが、それ以外の日本の経験や印象はグレートです。
Q:東京証券取引所で記者会見をすることについてどのように思われますか?
〔監督〕
まず、この場所で初めて映画の記者会見をするのが私だということは知りませんでしたので、大変光栄に思います。正直言って、NYの証券取引所では入ることすら許されていません(笑)。かつて色んな作品で撮影許可を貰おうとしましたし、本作でも撮影許可を貰おうと思っていました。アメリカ大手の新聞会社の方からも一緒に取材をさせて欲しいと申請しましたが、それも全て却下されました。ですから、今朝「今日の記者会見は東京証券取引所です。」と言われたときに「それって冗談?」と思いました(笑)。普通に何の問題もなく入れたことに驚いていますし、感謝しています(笑)。
作品のおもしろい裏話として、NYの証券取引所の周りで犯罪現場の黄色いテープを巻いているシーンがあるのですが、その撮影中にとうとう逮捕されてしまうのではないかと実は結構怖かったのです。すると、案の定警官が側にやってきたので、ついに逮捕されてしまうのだと覚悟していたのですが、「すぐ撮影が終わるので待って下さい。」 とお願いしたところ、「好きなだけ撮影してもらって構いません。なぜならこの建物の中にいる連中はNY警官の年金を10億ドル分損したんです。」と言われたということもありました。
Q:有名になられたことによって、取材は簡単になりましたか?それとも難しくなりましたか?
〔監督〕
通常、私が企業のトップや権力のある方に取材をお願いすると彼らは話したがらなくなりました。なので、取材をするのは難しくなりました。ただ、アメリカの一般の方々は、「大きな企業や政府に買われず、常に真実を解き明かそうとする」というような印象を持ってくれております。正直言って、一般の方々からのテープや投稿が送られてくるようになったので、取材が楽になった部分はあります。
この映画の冒頭に、ある家族が自分の家から強制退去させられるシーンがありますが、自分達のホームビデオで撮影されたもので、その映像は実際にその家族から郵送されたものです。彼らは自分達の身に起きたことを、一般の方々にも見て聞いてもらうには、マイケル・ムーアに送るのが一番だろうと考えて送ってくれました。そのように、人々が企業などで発見したものを送ってくれたりすることはとてもありがたいと思っています。ただ、正直言って「社会の敵!パブリックエネミーNo.1!」といった立場は決して楽しいものではありません。もし、私が人生をやり直せて、仕事を選べることになったら、おそらく今の仕事は選ばないと思います。それだけ大変な仕事なのです。
Q:日本も今アメリカと同じように大変な状況にあるのですが、日本人に熱いメッセージをお願いできますか?
〔監督〕
これまで私は自分の本や映画の中で、日本に対しては尊敬の念を持って描いてきました。私は「日本は正しいやり方を行なってきている。」と言ってきたのですが、それはおそらく私が日本に住んでいないからだと思います。実際に住んでいたら、間違っているやり方も見えているかもしれません。ただ、もし日本の方が病気になって医療を受けたとしたら「自分の貯蓄が無くなってしまうかもしれない。家を無くしてしまうかもしれない。」という恐怖感は抱かないと思います。おそらく国民が同じ日本国民だという意識が強く、一つのボートに乗っているような気持ちなのでしょう。だから、このボートに乗っている限り「自分だけ落ちることはないだろう。誰かが助けてくれるだろう。」という思いをみなさんがお持ちなのだと思います。
アメリカの状況としては、7.5秒に1家が差し押さえられ、強制退去となっています。現在、アメリカで家を失う、もしくは自己破産になる理由の第1位は医療費が高すぎて払えない、ということです。おそらく日本ではそのようなことはないと思います。なぜ日本の方々は、誰かが病気になったら助け合い、そして保険制度もちゃんとしているのだろうかと考えたところ、それは社会的にセイフティーネットを構築しているからだと思います。それが、残念なことにアメリカにはなく、どんどんお金がなくなって、家から出ないといけなくなっています。他の国では大丈夫なのに、なぜアメリカだけはこのような状況なのだろうかと、自分の作品の中で永遠のテーマとして描いているつもりです。私自身アメリカ人で、アメリカを愛していて、アメリカ以外には住みたくないとさえ思っていますが、アメリカの現状は目を覆いたくなることばかりです。他の文明国家に比べてアメリカだけが悪い状況だと思い、それはなぜかと常に自問自答しています。アメリカ人は医療費で破産になったり、殺しあったりもしていますが、日本ではそういう状況はないと思います。日本でも殺人はあると思いますが、アメリカの比ではありません。以前、日本では拳銃による殺人がゼロだった年もあり、今でも数十件だと思いますが、アメリカでは拳銃での殺人事件が年間約1万5千件、さらに拳銃での自殺も約1万5千件あります。これだけ数字の差があるのは、なぜかと常に問い続けています。
ただ、過去20年間で状況は変わりつつあるかと思います。アメリカだとレーガン大統領、サッチャー首相の時代ですが、そのころから日本も変わりつつあるかと思います。日本でもずっと保守的な首相が続き、アメリカでエルビスの真似をしてくださった首相までいらっしゃいました(笑)。 残念ながら、日本でもアメリカと同じような問題が起こり始めていて、犯罪率や失業率が高くなってきています。私の若いころの日本の印象としては、会社で誰かをクビにするということは“会社の恥”だと思っていた時代があったと思います。ですが、日本人が一生懸命作り上げたセイフティーネットを保守的な政府が崩し始めてしまい、保険や教育の資質を下げたり、失業者を増やしてしまったり、低所得者の層が生活しにくく、そして貧困であることがまるで犯罪であるかのような政策になっています。アメリカも同じような方針でどんどん教育費や医療保険の経費を削る、またはどんどん解雇するといった企業体制が重なっていっていて、今の若者達の教育水準が低くなるといった問題があります。アメリカで起きていた問題が、日本でも起こり始めています。アメリカを愛していますが、アメリカのようになりたいとかアメリカの真似をしたいといった思いは一切捨てて下さい。Be Japan!日本でいて下さい!みなさんが1945年以来作り上げた日本でいて下さい!教育の価値を十分大切だとわかっていた日本でいて下さい!そして、「解雇はしない」といっていた日本になって下さい!他国を一切侵略しない、そして侵略しようとする国をサポートしないと言っていた国に戻って下さい!
ブッシュ前大統領がしたことをサポートしてしまったことで、彼のしたことが正当なことであると世界中が思ってしまいました。日本の首相もそうですが、イギリスやイタリア、スペイン、そしてデンマークでさえサポートしていました。こういった国々がブッシュ前大統領をサポートしてしまったことで、彼の行なったことや戦争が正当化されてしまい、世界中の国々の人達が苦しめられる原因を作ったので、こういった国々の首相や外相達も同様に責任を問われるべきだと思います。
ただ、私は日本を非難している訳では決してありません。みなさんがご存知のように、私は日本のとてもいいところを言ってきました。日本は平和で、人々に対して尊敬の念を大事にする国ですので、私は謙虚なお願いとして、「昔の日本に戻ってもらいたい。今の日本の道から外れて元の正しい道に新しい首相の元で戻ってもらいたい。」と思っておりますし、私は個人的に日本を大変尊敬しております。
小倉優子さんが花束ゲストで登場。
〔小倉〕
映画を観て楽しかったので、今日はお会いできてうれししかったです。緊張していましたが、格好がとてもカジュアルで親しみやすいので、緊張が解けましたし、とてもやさしい人だなと思いました。監督からは「かわいいね」と言ってもらいました(笑)。
私は株をしているので、観る前からこの映画はとても興味がありました。ちなみに、株を始めて最初の2年はダメでしたが、3年目の今年で初めてプラスになりました。将来の夢としては、私でも株をやってプラスになったので、世の中で株に興味のある方に夢を与えられるようになったらうれしいです。まだ、お金の使い方は決めていないですが、いい使い方をしたいと思っています。
私は株を始めてからニュースを見るようになったり、今まで考えもしなかったことを考えるようになったり、人生勉強だと思っています。今年も不景気に強い会社を探していたらプラスになったので、不景気だから全てが悪い訳ではなく、悪い中でもいいことがあると思いました。不景気だけど、楽しく前向きにやっていきたいと思います。ちなみにこりん星の景気は安定しています(笑)。デフレも大丈夫です(笑)。
作品については、最初難しいと思いましたが、アメリカの経済のことがすごくわかりやすくて、サブプライムローンやリーマンショックなどについて、ニュースを見ていない人でも「こういうことがあって今の経済状況なんだな」ということがわかって面白いので、私のような若い人達に是非観て欲しいです。あと、色々なところに突撃する監督がすごくかっこよかったと思いました。
〔監督〕
ありがとうございます。日本の若い方々からもたくさんEメールを頂戴しますし、「華氏911」という作品に関してはアメリカ以外では日本の興行収入が第1位でしたので、本当に日本の若い方々にもご覧頂けていると思いますし、日本の若い方々の教育の一環を担えればうれしいと思っています。
私の88歳になる父に今週日本に行くと伝えたところ、大変喜んでくれました。以前、父とイラクとアフガニスタンの戦争について話をしていたのですが、なぜブッシュ前大統領が戦争を始めたかという理由は彼が戦争を体験したことがないからだと思います。もし戦争を知っていたら、絶対に2度と戦争を繰り返したくないと思うはずです。父は第2次世界大戦の海軍にいた頃に沖縄にいたこともあったので、今回沖縄に、アメリカだけでなく日本の犠牲者の方々に献花をしに行こうかとも思っておりました。
この世の中は悲観すれば問題も多く、大変悲しい場所かもしれませんが、絶対よくなると私は信じています。常に大きな希望と楽観的な考えを持っていて、いつか我々は戦争を知らない人間になれることを願っています。明日オバマ大統領がアフガニスタンの戦争を拡大するかどうかの発表をしますが、私は彼に直接、父や父の友人たちの個人的なリクエストで「オバマ大統領、あなたは戦争をご存知ない。戦争を知っている我々はもう戦争はしたくありません。」といった内容を送りました。本日、日本のみなさんと平和へのメッセージをわかちあえることをうれしく思います。この戦後60年以上、日本のみなさんは平和への旗手として活躍されたと思っています。
ありがとうございました。
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「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」
配給:ショウゲート
12月5日(土)より TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 梅田にて限定公開
2010年1月9日(土)より 全国拡大ロードショー
(C) 2009 Paramount Vantage, a division of Paramount Pictures Corporation and Overture Films, LLC.
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華氏 911 コレクターズ・エディション [DVD]
シッコ [DVD]