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8月8日よりテアトル新宿にて先行公開中の「南極料理人」。8月22日の全国公開日には沖田修一監督と原作者である西村淳さんによる舞台挨拶が決定した。舞台挨拶はテアトル新宿、品川プリンスシネマ、TOHOシネマズ川崎にて。
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全国公開を目前にした8月12日、国立極地研究所(極地研)にて「知ろう! 体験しよう! 南極」と題したイベントが開催された。極地研副所長であり、第51次南極観測隊長の本吉洋一氏、朝日新聞記者として第45次南極観測隊に同行した中山由美氏、魚にくわしいさかなクンを迎え、トークショーやマイナス45度体験、昭和基地との交信を通して、南極について知る今回のイベント。
抽選で選ばれた12組の親子が参加し、興味深い南極での体験談や、現在、南極にいる観測隊調理担当の篠原洋一隊員と麦沢京介隊員からの「生の声」、想像以上に寒いマイナス45度の世界を楽しみながら体験した。
☆以下、トークショーと昭和基地との交信内容:
本吉洋一氏(以下、本吉):
今日は皆さんを南極の世界にご招待します。 今、南極は真冬です。日本は真夏ですが、ちょうど正反対なんですね。今日はみなさんにちょっと寒い体験をしていただいて、そのあとに昭和基地と交信をしていただいて、南極の寒い世界を知っていただこうと思っています。
中山由美氏(以下、中山):
私は朝日新聞の記者として、5年前に南極に行きました。昭和基地から1000kmも離れたところにあるドームふじ基地です。それが映画『南極料理人』の舞台でもあるんです。うーんと寒いところです。今日は、実際に寒さを味わっていただくのも楽しみですね。
さかなクン:
さかなクンはいつも中山記者から南極のお話をたくさん聞いて「うお〜!南極って本当にすギョいところなんだ!! いつかは南極に行ってみたい」と思っています。『南極料理人』も観せていただきました。素晴らしい!! 南極で情熱いっぱいに生きる人々はたくましい! と思いました。
本吉:
さて、南極には色々な国が基地を作っています。南極大陸のすぐ目の前の小さな島の上に昭和基地があります。ドームふじ基地はもっと大陸の中に入ったところでとってもとっても寒いところです。平均気温がマイナス54度、最低気温がマイナス79度。夏でもマイナス30度ととっても寒いところなんです。
さかなクン:
マイナス79度といったらカチカチに凍ってしまって、とても生きていけない環境ですよね。 『南極料理人』の映画の中でも「細菌も暮らせない」、と言ってましたね。
中山:
行くのが遠くて大変なんですよね。
本吉:
昭和基地からドームふじ基地までは約1000kmあります。キャタピラの雪上車でゆっくりゆっくりでないと走れないので1日50kmくらいしか進めません。人間が歩くよりもちょっと早いくらいです。約時速10kmなので、1000km走るためには3週間かかります。
中山:
私たちが行ったときは1カ月かかりました。
さかなクン:
ええ〜! 1ヶ月ですか! 移動の最中というのはどういう生活なのですか?
中山:
ずーっと雪上車の中です。標高が富士山よりも高い3810mもあるので、行けば行くほど寒くなるし、空気も薄くなる。燃料も雪上車でドラム缶を引っ張って行くので、自分たちでポンプを回して燃料を入れて、自分たちで雪を溶かして水も作ります。
さかなクン:
雪上車で1ヶ月移動というと、お風呂にも入れないんですよね? お手洗いは?
本吉:
お風呂は入れません。でもお風呂に入らないで死んだ人間はいませんから大丈夫です(笑)。お手洗いは全部外ですね。みなさんもマイナス50度で外でおしっこをすると、特に男の子はそのまま凍るってよく聞くことありますよね? あれは完璧な嘘です。
さかなクン:
ああ、良かった! 安心しました。
中山:
寒い思いをして1ヶ月もかけて空気の薄いところに行って、何をしているのかについて教えてください。
本吉:
ドームふじ基地の下には、南極に降り積もった雪が固まった氷が3000mあります。その氷には雪が降った時の空気がたくさん含まれています。当然下の方に古い氷があるので、その古い氷を取り出して調べると、約70万年前の地球の空気が氷の中に残っているわけです。それを調べると、昔の地球の大気の様子、温かかったのか、寒かったのか、そして問題になっている炭酸ガスがどのくらいあったのか、そういうことが分かります。
ところで、氷の下には岩盤があるのですが、どうなっていると思いますか?
さかなクン:
岩盤と氷の間ですか? 氷が岩盤にぴたっとついていると思います。
本吉:
私たちもそう思っていたのですが、実は氷の一番下は水だということが分かりました。氷が溶けているのか、溶けたものが流れてきているのかはまだわかりません。南極の氷は一番上が一番温度が低く、下にいくほど温度が上がっていくんです。地球の熱で一番下が温かいみたいです。氷を掘る作業は大変です。ボーリングといって、ドリルで穴を上からどんどん掘っていきます。「コア」という4 mくらいの氷の柱を取って、また掘って...。3000m掘るために3年も4年もかかります。
MC:ドームの生活について教えてください。
中山:
人数が少ないので皆で色々な仕事を掛け持ちます。私も記者として行っていたのですが、調理も担当しました。ドームではお湯を沸騰させても86 度くらいにしかならないので、さっと茹でたいものがうまくできません。特に苦労したのは麺類! それから外に置いておくと食料がカチンカチンに凍ってしまうので、前の晩に室内に入れて溶かしておかないと、食べられないんです。
さかなクン:
映画でも拝見しましたけど、お料理がすっごくレパートリー豊かで美味しそうですよね。
本吉:
越冬隊は1年分の食料として船で、ひとりあたり大体1トンくらい持っていくんです。
中山:
「途中で足りなくなったから持ってきてください!」という訳にいかないですからね。
さかなクン:
映画の中で、お野菜を育てているシーンがあり、ビックリしました! 実際に育ててらっしゃるのですか?
本吉:
昭和基地ではミニトマトやきゅうり、貝割れ大根などを作っていましたが、採れても大変なんです。例えばミニトマトが3つとれたとしますよね。でも、30人の隊員でどうやってわけるのか、という。
中山:
私たちは1本のきゅうりを42人で分けましたよ。超薄スライスですよ。
さかなクン:
本当に食べられることのありがたみが増しますね。
本吉隊長、南極にはいろんなお魚が暮らしていると思うのですが、お魚を釣ったりして食べることはないのですか?
本吉:
海の中の温度は凍るほどではないので海の中には色々な動物がいます。魚はもちろん、タコやウニなど色々なものがいます。昭和基地のそばの海では氷に穴をあけてワカサギ釣りのように釣り糸を垂らして「ショウワギス」という小さな魚が釣れます。それから「ライギョダマシ」という1m30cm もあるような魚もいます。
さかなクン:
すギョい! 図鑑にライギョダマシは30年で175cmになる、と書いてあります。
中山:
夏は海に氷が張っていなかったので、海岸で網を伸ばしてすくうとウニがたくさんとれました。時にはアザラシにも出会います。冬に海氷の上岸を歩いていると穴があって、アザラシが息継ぎで顔を出したりするんです。海氷の上でお昼寝している姿もよく見ました。
さかなクン:
実際にアザラシに会ったら怖くはないんですか?
本吉:
アザラシは威嚇はしますけど、襲っては来ないので怖くはないですね。
<昭和基地通信>
■回答者
篠原洋一隊員(調理担当)
麦沢京介隊員(調理担当)
Q1:他の基地とのお食事会はあるんですか?
篠原:
隣の基地まで1000km、ちょっとお隣行ってごはん食べよう、とかお醤油借りようとはいかないんです。ごはんは一緒に食べられませんが、今年は「南極フィルムフェスティバル」といって、みんなで5分くらいの映画を作っています。インターネットやメールを使ったそういう催しで他の基地の作品をみんなで見て様子を知ることができます。
Q2:ペンギンは何匹いるんですか?
篠原:
実は8月は寒いので北の方へ帰ってしまうため、今ペンギンは近くにいないんです。10月になるとペンギンは子育てのために基地の周りに来て、子育てを始めます。基地の周りで隊員が作業をしていると、ペンギンは好奇心が旺盛で天敵が少ないんで、「なにしてるのかな?」と覗きに来ます。
Q3:飲み水がなくなったらどうするんですか?
篠原:
飲み水はプールみたいな水槽に雪を入れて、そこにエンジンの熱で雪を溶かして水を作ります。脱塩装置という機械で塩分などを除去して、飲み水が作られます。飲み水を作るのに大変な努力をしているので水は貴重です。蛇口を開きっぱなしにしない、など無駄使いしないようにしています。基地では電気も発電機を回して作らなくてはいけないので、昭和基地はエコにうるさいですよ。
Q6:ゴミはどうしているんですか?
篠原:
基地内ではペットボトルやプラスチック、不燃ごみ、缶、ビンと、かなりの種類を分けなくてはいけません。南極を汚染してはいけないので、すべてのゴミを持ち帰ります。
篠原:
私たちは1月いっぱいまで基地にいます。そこにいらっしゃる本吉隊長が迎えに来てくれます。
江原:
極夜も明けたので、そろそろまた、釣り大会をやろうかな、と思っています。
中山:
さかなクン、行きたいでしょ?
さかなクン:
行きたいです!! いつか、お願いいたします。
篠原:
さかなクン是非、こちらに来て魚について教えてください。
さかなクン:
うひゃあ! うれしいです!! 了解です。是非、さかなクンにも南極のお魚と南極の魅力を教えてください!
中山:
みんな、南極行きたくなったんじゃないかな。未来の観測隊目指してがんばってくださいね。
子供たち:
(元気に手を挙げながら)はーい!!