『エキストラ』
真愛連ラム党首と、金民党ヨン党首がゲストで登場する労働節(メーデー)の集会の準備が進んでいる。一方同じ団地のとある部屋にいる2人。胸に「愛」という文字のあるポロシャツを着て、長毛(チョンモウ)は、頭にラム党首の写真付きのかぶりものを付けている。インド系の顔立ちのピーターは、銃を手に実行犯役の練習をしている。生活のために少しでも高額の仕事をしたい2人は、集会で騒ぎを起こすよう兄貴から命じられ、どう演じるか思案中だった。会場では労働節の集会が始まろうとしていた…。
『冬のセミ』
2人の男女が、身の回りの物を黙々と標本にしている。壊れた家のレンガや、街で集めた日用品などである。彼らは、記憶と特定の物に囚われていた。2025年の香港は、黙示録の中に書かれた世界のような季節を迎えている。現在存在する生物は870万種。それはかつて、地球上に存在した生物の2%にしか過ぎない。ある朝男が、自分を標本にしてほしいと頼んだ。自分のやってきた事を徹底し、信念を曲げないために。少しずつ準備は進められていった…。
『方言』
普通話(北京語)の普及政策で、タクシー運転手に試験が課せられることになった。広東語が日常だった彼にとっては、普通話を学ぶことは大変で、大きな支障となる。仕事が出来る場所が制限され、自由に乗客を乗せることが不可能だし、乗せてはいけない場所で、半ば無理矢理に客が乗り込んできても、違反だと警察に言われる。もうすぐ中学生になる子供は、学校では普通話で学ぶ。外国のサッカー選手の当て字が広東語と普通話と違うため、音が違い、誰の話なのか、親子のコミュニケーションにも時間がかかる状態だ。
『焼身自殺者』
2025年ある日の早朝、イギリス領事館前で焼身自殺をした人物がいた。目撃者がおらず、遺書もない。テレビのニュースは身元も動機もまだ発表されていないし、独立運動と関連があるとの見方もあると報じていた。恋人のカレンが以前、私が自殺したらどうする?と聞いたのを思い出し、胸騒ぎを感じた彼は大学へと向かう。カレンの仲間たちは、逮捕されたカレンを助けに行くと言うが、彼は行かないと言い、まるで腰抜けの様な扱いを受ける。しかし自殺者の追悼集会には、静かに蝋燭に祈りを捧げる、彼の姿があった。
『地元産の卵』
2025年香港で最後の養鶏場が閉鎖される。そこは父親の時代からずっと仕入れていた養鶏場で、チョンはその知識と技術を買われ、台湾に行くことを決めた。店先に書かれた「地元産の卵」という表示の、「地元産」という言葉が良くないと、少年団が写真を撮っていった。同じ制服を来て帰ってきた息子に、チョンは規則に反していると言われた事を問い詰める。持っていた通知には、少年団の団長は団員に諜報活動をさせる権限をもち、親に通知しない場合があると書かれていた。また、良くない言葉のリストが配布され、その中に「地元産」という言葉が含まれていたのだ。
新着映画情報
『十年』
原題:十年 / Ten Years
配 給 : | スノーフレイク |
---|---|
公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2017年07月22日 |
映画館: | 新宿K's cinemaほか全国順次公開 |
リウ・カイチー「地元産の卵」 |
監督:クォック・ジョン「エキストラ」 |
2015/香港/広東語/108分 |
変わりゆく現実と、変わらないと願う未来
2017年7月1日に中国への返還20年目を迎える香港の今を描いた社会派問題作。5人の若手監督による、5つのショート・ストーリーで構成された本作は、映画が製作された2015年から、10年後の香港の未来を描いた物語。わずか50万香港ドル(約730万円)で製作され、単館でスタートした本作は口コミで評判が広がり上映館も拡大、香港では異例の8週間という長期興行となり、最終興行収入は600万香港ドル(約8,800万円)を超えた。そして2016年4月、香港のアカデミー賞と称される香港電影金像奨で最優秀作品賞を受賞した。
©Photographed by Andy Wong, provided by Ten Years Studio Limited