北朝鮮の寒村で、妻子と共に貧しくも平穏な日々を送る漁師ナム・チョル。その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して、韓国側に流されてしまう。韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、執拗で残忍な尋問を受けることに。一方、チョルの監視役に就いた青年警護官オ・ジヌは、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕えられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自ら舌を噛み切り息絶える。
やがて、チョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気付く。何とか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジヌが待つ場所に戻るチョル。ところが、街中のチョルの姿を映した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。資本主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰って来たチョル。だが、彼を待ち受けていたのはいっそう苛酷な運命だった。
新着映画情報
『The NET 網に囚われた男』
原題:The Net
配 給 : | クレストインターナショナル |
---|---|
公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2017年01月07日 |
映画館: | 新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー |
リュ・スンボム |
監督:キム・ギドク |
2016/韓国/アメリカンビスタ/5.1 SRD/112分 |
スパイでも英雄でもない。ある事故により国境を越えた漁師の男に降りかかる理不尽な運命。
カンヌ(「アリラン」ある視点部門最優秀作品賞)、ヴェネチア(「うつせみ」監督賞)、ベルリン(「サマリア」監督賞)と、世界三大映画祭を制覇。「嘆きのピエタ」で、第69回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(最高賞)に輝いた、韓国随一の鬼才キム・ギドク。本作は、これまでの20本を超えるギドク映画を総括するとともに、さらなる高みに飛躍を遂げたギドクが、世界に向けて放った社会派ヒューマン・ドラマ。 朝鮮半島の悲劇を背景に、一人の男の運命を通し、国家と個人という枠を超えて常に弱者が犠牲を強いられ切り捨てられる現代社会の矛盾と闇に切り込む。
©2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.