一つの事故。一人の男。三人の女。
カナダ、ケベック州モントリオール郊外。作家のトマスは恋人サラと暮らしているが、仕事が上手くいかずその関係はぎこちない。ある大雪の日の夕暮れ、車を走らせていたトマスは、突然、丘から滑り落ちてきたソリに驚き急ブレーキをかける。そこには車の前で虚ろに座り込んでいる幼い少年がいた。幸い怪我もなくほっとしたトマスが彼を家まで送ると、母ケイトは息子の姿を見て半狂乱になる・・・。
この悲劇的な事故はトマスの過失によるものではない。弟にあと少しの注意を払うべきだった小さなクリストファーの責任でも、そしてまた、もっと早く家に帰るように息子たちに言えたはずのケイトの責任でもない。事故はトマスの心に大きな傷を残し、そのせいで恋人サラとの関係は壊れてしまう。トマスにできることは、ただ書き続けることだけ。しかし、他人の悲しみをも含んだ自らの経験を書く権利があるのだろうか?ようやく書き上げた小説は、トマスに新しい扉を開かせることになった。
月日が流れ、やがてトマスは作家として成功を収め、編集者のアンとその娘ミナと新しい生活を始めようとしていた。一方、ケイトとサラもまた、それぞれの人生をゆっくりと歩み始め、すべては上手く行き始めたように見えていた。そんな中、11年前に5歳だったクリストファーから、トマスのもとへ一通の手紙が届く・・・。