坂築静人は、不慮の死を遂げた人々を〈悼む〉ため、日本全国を旅している。〈悼む〉とは、亡くなった人の「愛」にまつわる記憶を心に刻みつけることだ。死者が生前「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか、その生きている姿を覚えておく」ための静人なりの儀式は、傍からは奇異に映った。だが、この行為こそが、静人と関わった様々な人たちの「生」と「愛」に対する考え方に大きな影響をもたらし、誰もが抱える生きる苦しみに光を照らしていく。
山形のとある事故現場で静人に出会った、雑誌記者・蒔野抗太郎には、余命幾ばくもない父親がいるが、子供の頃からの確執によって、袂を分かったままだった。偽悪的なゴシップ記事を書き続け“エグノ”と揶揄される蒔野は、静人に目をつけ、取材をはじめる。
同じく山形。産業廃棄物処理場を埋め立てた展望公園で、静人と出会った奈義倖世は、夫・甲水朔也をその手で殺した過去をもっていた。夫の亡霊に苦しむ倖世は、救いを求めて、静人の旅に同行する。
横浜にある静人の実家では、母・巡子が末期がんと闘っていた。折しも、妹・美汐は妊娠しているにもかかわらず、恋人に別れを切り出されてしまう。破談の理由には、静人の〈悼む〉行為への偏見も含まれていた。ふたりを支えるのは、父・鷹彦と従兄弟の福埜怜司。彼らは、旅に出たまま帰ってこない静人のことも心配している。
謎の旅人と化している静人の身辺取材をはじめた蒔野は、その途中、父の愛人・理々子から父の死の報を受ける。葬式に顔を出した蒔野は、見ないようにしていた父の思いに触れ、動揺する。その矢先、これまでの悪行のつけがまわったかのように、命を狙われるはめに陥ってしまう。一命を取り留めたものの視力を失った蒔野は、静人の実家を訪れる。そこで、巡子から明かされる、静人の〈悼む〉行為に秘められた真実.....。
新着映画情報
高良健吾 |
監督:堤 幸彦 |
2015/日本/138分/R15+ |
あなたは思い出す。誰に愛され、誰を愛していたか。
2008年第140回直木賞受賞作、天童荒太の『悼む人』を堤幸彦監督が映画化。主人公・坂築静人(さかつきしずと)を演じるのは、若手実力派俳優の高良健吾。夫を殺した罪に苛まれ続ける女・倖世に石田ゆり子、彼女を追いつめる夫の亡霊を井浦新。静人の帰りを待つ末期がんの母親に大竹しのぶ、新たな命を授かる静人の妹を貫地谷しほり。そして静人を追う人間不信の雑誌記者に椎名桔平。
豪華俳優陣による火を噴くような極限の演技と、堤幸彦が生み出した圧倒的な映像世界により、静人=「悼む人」と、彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と憎しみ、罪と許しのドラマの果てに予想もつかない感動が待ち受ける。
©2015「悼む人」製作委員会/天童荒太