奄美大島に暮らす界人(かいと)は16歳。ここ奄美に古代から伝わる八月踊りの満月の夜、その月明かりのもと、海に浮かぶ男の死体を発見する。衝撃を受け、その場から走り去った彼を見ていた同級生の杏子に、翌日問いかけられながらも、界人は自分の中にあるわだかまりを口にすることができない。
ユタ神様として、島人の心の拠りどころになっていた杏子の母イサは病を抱え、死期を迎えつつあった。「たとえこの世を去っても、お母さんの想いはここにたしかにあるし、ぬくもりはあなたの心に残るのだから」。ユタの親神様にそういわれても、肉体が消えたら会えないという現実を、杏子は受け入れることができない。だが、イサは「自分の命は杏子につながっているし、いつか杏子が生む子どもともつながってゆく。だから死ぬことはちっとも怖くないの」と、娘に優しく語りかける。
一方で思春期の界人は、恋人の影を感じさせる母・岬の女としての側面をどこかで穢らわしく想っていた。そして、あの死体の男…。界人はうまく言葉にできない気持ちを抱えながら、幼いころに離婚し東京に暮らす父に会いに行く。
東京から戻った界人は、ある晩、些細なすれ違いから、岬の言動を激しくなじり外に飛び出した。界人が家に戻ると岬の姿はなく……。
新着映画情報
村上虹郎 |
監督・脚本:河瀬直美 |
2014/日本・フランス・スペイン/シネマスコープ/5.1ch/118分 |
神の島・奄美大島を舞台に、二人の少年少女の初恋と成長を通して描く、つながっていく命の奇跡。
「萌の朱雀」(97)でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)、「殯の森」(07)でカンヌ国際映画祭グランプリ(審査員特別賞)受賞と、作品を発表するごとに世界で注目を集めてきた河瀬直美監督の最新作。本作の舞台は、いまなお自然と神と人が共存する奄美大島。生命の源である海と深い森が放つ濃密なエネルギーが漲っている・・・そんな奄美の圧倒的な自然を余すところなく映し出したのは、「沙羅双樹」をはじめ、河瀬作品の撮影を数多く手がけるベテラン・カメラマン山崎裕。幻想的な水中シーンをはじめ、母から子へ、子から孫へと連綿と受け継がれ、つながってゆく人間の命、その輝きの瞬間をスクリーンに深く焼きつけている。
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