雷鳴がとどろく雨嵐の早朝、3千もの兵に取り囲まれた利休屋敷。太閤・豊臣秀吉の命により、今まさに希代の茶人・千利休は自らの腹に刃を立てようとしていた。死に向かう夫に対して妻・宗恩がたずねる。「あなた様にはずっと想い人がいらっしゃったのでは…」その言葉が、利休の胸中に秘められた、遠い時代の記憶を蘇らせていく。
かつて利休は織田信長の茶頭として仕えていた。信長にまで「美は私が決めること」と豪語する彼の絶対的な美意識は、やがて信長家臣の秀吉をも虜にする。信長の死後、天下統一を果たした秀吉の庇護のもと、“天下一の宗匠”として名を馳せる利休。しかし、その名声はしだいに秀吉の心に渦巻く“むさぼり”に火をつける。愛する者を奪われ、立場が危ぶまれていく利休。「残るあやつの大事なもの…」利休がひた隠しにする、彼に美を教えた“何か”。秀吉が執拗に追い求めるその秘密は、青年時代の利休の記憶に隠されていた。
若かりし頃、利休は色街に入り浸り、放蕩の限りを尽くしていた。そんなある日、高麗からさらわれてきた女と出逢う。その気高き佇まいと美しさに、一目で心を奪われた彼は以来、かいがいしく女の世話を焼き、心を通わせていく。しかし女は一国の王への貢ぎ物であり、それは叶うはずない恋。やがて別れの時を目前に迎えた夜、利休の情熱が、ある事件を引き起こす。はたして、その先に利休が見たものとは……。
新着映画情報
市川海老蔵 |
監督:田中光敏 |
2013/日本/123分 |
時の権力者をもおそれさせた千利休の正体とは?
原作は第140回直木賞受賞作、山本兼一の『利休にたずねよ』。利休はなぜ、武士でもないのに切腹しなければならなかったのか、自らの命をかけて守ろうとしたものはなんだったのか、その謎には実は若き日のある女性との秘められた恋があった。
主演は、歌舞伎俳優・市川海老蔵。まったく新しい千利休を全身全霊で演じる。その利休を陰ながら支える妻・宗恩には中谷美紀。利休の審美眼を見初め、表舞台に引き入れた織田信長に伊勢谷友介。利休を寵愛しながらも、切腹を命じるに至る権力者・豊臣秀吉に大森南朋。そして利休の師匠、武野紹鷗(たけのじょうおう)役に特別主演の市川團十郎。監督には「火天の城」に引き続き、再び山本文学の映像化に挑戦する田中光敏。脚本はNHK大河ドラマ「天地人」を手掛けた小松江里子。音楽は「レッドクリフ」で鮮烈なメロディラインを描いた岩代太郎。撮影は2012年11月5日に東映京都撮影所にて開始され、同年12月23日にクランクアップ。三井寺、大徳寺、神護寺、南禅寺、彦根城といった歴史的な文化遺産でロケーションが行われた他、時価数億円ともされる茶の名器の数々を実際に使用するなど、「本物」にこだわった。千利休より受け継がれる茶道の名門、三千家の協力も得て、幻の「利休の所作」を再現。
© 2013「利休にたずねよ」製作委員会