昭和初期の神戸。洋服の仕立屋を営み、柔軟な考えを持ち、家族を温かく見守る父親・盛夫。大きな愛で家族を包む母親・敏子。そんな両親のもと、好奇心旺盛に育つHこと肇。そして妹の好子。幸せに暮らしていた4人だったが、H一家の周りでも、近所のうどん屋の兄ちゃんが政治犯として警察に逮捕されたり、召集令状がきたオトコ姉ちゃんが入隊せずに脱走して、憲兵に追われるなど、徐々に不穏な空気が漂うようになっていく。
やがて戦争がはじまり、軍事統制も厳しさを増し、おかしいことを「おかしい」と自由な発言をしづらい時代となっていく中、盛夫は、周囲に翻弄されることなく、「おかしい」「なんで?」と聞くHに、しっかりと現実を見ることを教え育てる。
中学校に入ったHを待っていたのは、軍事教練ばかりが続く毎日だった。盛夫は消防署に勤めるようになり、敏子は隣組の班長に、そして好子は田舎に疎開することになるなど、戦況が不利になるにつれ、それぞれの日常が激変してゆく。ついに神戸も大空襲に襲われ、終戦を迎えたとき、街は見渡す限り焼け野原になっていた。その中で、神戸も日本も新しく生まれ変わろうとする。そして、Hの一家も、小さいが確かな一歩を踏み出していく―。
新着映画情報
水谷豊 |
監督:降旗康男 |
2013/日本/122分 |
激動の昭和初期。異国情緒あふれる神戸を舞台に、 「戦争」という激流の渦に巻き込まれながらも、 勇気、信念、愛情をもって生き抜いた 「名もなき家族」の物語。
1997年に妹尾河童初の自伝的長編小説として刊行された『少年H』の映画化。昭和初期の激動を描く古沢良太(「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ)の脚本と降旗康男(「あなたへ」)の演出は、美しく異国情緒あふれる神戸の街が戦争で荒廃していく中、少年H一家が時流に流されること無く、強くたくましく生き抜き、街とともに復興していく姿を、時にユーモラスに時にハードに描き出す。物語の柱となる「少年H」の父と母を演じるのは、初“夫婦役”で28年ぶりに共演する水谷豊と伊藤蘭。
© 2013「少年H」製作委員会