イタリアのある街で、取り壊されようする教会堂に一人残る老司祭。長い年月、彼は神の愛を唱えてきたが、人々の望みは別のものに代わろうとしていた。夜、教会堂に、アフリカからさまよう人々が長い旅を経てやってきた。彼らはみな不法入国者だった。そして即席の小さな村が作られてゆく。この村にはいくつかのグループがあった。あるグループは、身重の女性以外は、みな旅の途上で亡くなっていた。ほかのグループにも多くの犠牲がでていた。あるグループはイスラム原理主義者だった。そのリーダーはこの世界をよくするためには暴力しかないという。それに対し、技師は言葉の力を信じていた。ひとりの少年は難破船でノートを拾っていた。ノートには世界が始まる頃の美しい大地の様子が描かれ「すべての子はひとつの母から生まれた」という言葉で結ばれていた。身重の女性が出産する。人々は赤子の世話をし、老司祭はキリストの誕生を思い、祈りを捧げた。若者たちには恋も生まれようとしていた。そこへ地区の保安委員が不法移民を取締りにやってくる。人々のなかに密告者がいたのだ。老司祭は「教会はすべての人に開かれている」と抵抗し、いったんは保安委員らを退けることができた。そして翌朝、人々は次の地へと旅立とうとしていた…。
新着映画情報
『楽園からの旅人』
原題:Il Villaggio di Cartone / The Cardboard Village
配 給 : | アルシネテラン |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2013年08月17日 |
映画館: | 岩波ホールほか全国順次ロードショー |
マイケル・ロンズデール |
監督・脚本:エルマンノ・オルミ |
2011/イタリア/イタリア語/ヴィスタビジョン/SRD/87分/字幕翻訳:吉岡芳子 |
神々しく、美しく──巨匠エルマンノ・オルミ監督が 混迷の時代を旅する人々へ慈しみをこめて贈る荘厳なる物語。
「木靴の樹」「ポー川のひかり」などの名作で知られるイタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作。かつてオルミ監督は、「ポー川のひかり」(06)を自身の映画人生における最後の劇映画と語った。しかし5年後、前言を翻して、現代の黙示録ともいうべき本作「楽園からの旅人」を発表。世界の状況が一層混迷するなか、この作品をとおして、よりよい社会への思いを改めて示さずにはいられなかったのだ。「世界を温もりのあるものに戻す」という彼の人間性への信頼は失われることはなく、不安に満ちた現代社会のなかで、旅人たちの神々しさを示し、すべては破局の中から新しく始まり、未来は私たちが築くものと語る「楽園からの旅人」は、まさに希望の映画である。
エデンの園には「善悪の知識の木」と「命の木」がある。
かつて神は人間に
「命の木」の実まで食べてはならないといった。
しかし現代の私たちは「命の木」にも手をのばしている。
わたしたちは何をしようとしているのか。
エルマンノ・オルミ
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