“プルート”はある場所で“ゼリーフィッシュ”と名乗る女性と待ち合わせ、当てもなく車を走らせる。見知らぬ者同志、共に死のうとしているのだ。「最後の一日を最高の日にしたい」というゼリーフィッシュに、プルートは穏やかに死ねるある特別な方法を試すことを提案する。血を抜くのだ。ゼリーフィッシュの意識は次第に遠のいてゆく。
サイモンは高校の生物学教師。実はプルートはサイモンの別名なのだ。いつも通り教室で授業中、白い風船のついた奇妙な拘束衣を着た母親ヘルガを見とがめた警官が、自宅に乗り込んでいた。しかしそれはアルツハイマーの母親をがんじがらめにしないため、息子が考えた特別な着衣だった。
ヴァンパイアを信奉する“レンフィールド”とその仲間が集まるパーティに参加したサイモン。皆でブラム・ストーカーの吸血鬼映画を見ているうちに眠り込んでしまい、目覚めるとレンフィールドから夜の街に出ようと誘われる。突然、通りすがりの女性をドラキュラのコートをまとって襲う彼を見ていたサイモンは、気分が悪くなり、その場を離れた。
そんなある日、サイモンは標的として選んだ“ラピスラズリ”によって思いがけず集団自殺に巻き込まれる。辛くも生き残った“レディバード”と迷いの森を脱出するが、その道中、自分がヴァンパイアであることを告白してしまう。後日再会したレディバードはサイモンの望みを叶えようと、血の提供を申し出る。彼女はもう一度自殺したがっていたのだ。そして同じ頃、教え子のミナも自殺を企て、サイモンにとって最も長い一日が始まる・・・。
新着映画情報
ケヴィン・ゼガ―ズ |
監督:岩井俊二 |
2011/アメリカ・カナダ・日本/119分 |
惹かれあう孤独な魂たち この世の果ての恋物語
「Love Letter」(95)、「スワロウテイル」(96)、「リリイ・シュシュのすべて」(01)、「花とアリス」(04)など、孤高なる美意識と世界観で観客を魅了する岩井俊二の8年ぶりとなる長編劇映画。本作のヴァンパイアは、これまでに創られた吸血鬼とはまったく違うルールの下に生きている。それは病身の母親と暮らす高校教師のサイモンが、あるwebサイトに集まる“死にたい少女たち”に血を求めて寄り添ううちに、しだいにピュアな愛に昇華してゆく“変態な純愛物語”だ。
主人公のサイモンには「トランスアメリカ」のケヴィン・ゼガーズ。蒼井優が、サイモンの行動に思わぬサプライズをもたらす重要な役割の留学生ミナ役で“岩井ワールド”を彩っている。
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