瞳を輝かせながら、屋根の上で夜空を見上げては、手元の紙に星座を描く一人の男。彼の名は安井算哲。将軍に囲碁を教える名家の息子として生まれ、学問への造詣も深い。しかし出世や富には興味がなく、自分の好きな算術や星の観測に熱中している時は周りが見えなくなってしまう。
算哲は形ばかりとなった囲碁の勝負に疑問を感じ、いつも真剣勝負の場に身を置いていたいと願う熱い思いを心に秘めていた。若き将軍・徳川家綱の後見人である会津藩主・保科正之は、そんな算哲を見込み、日本全国の北極出地(北極星の高度を測り、その土地の位置を割り出すこと)を命じ、刀を授ける。
時は江戸前期、800年にわたって使われていた中国・唐の時代の暦がずれ始めていた。保科は算哲に、暦の誤りを正し、新しい暦を作るよう命じたのだ。これには、大きな難関がふたつ待ち受けていた。ひとつは、星や太陽を観測するだけで途方も無い時間と労力がかかること。ふたつめは、改暦が朝廷の司る聖域であると同時に、莫大な利権が絡むものであり、そこに幕府が口をはさむことは、朝廷を敵にまわすも同然なこと。
そんな大事業にとまどいながらも、この任務の頭取・建部昌明、副頭取・伊藤重孝、その下男たちと共に、いよいよ算哲の旅が始まる──
新着映画情報
岡田准一 |
監督:滝田洋二郎 |
2012/日本/141分 |
江戸の天文学者・安井算哲、800年の歴史をひっくり返す。
第81回米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」から4年、滝田洋二郎監督の受賞後初となる作品が完成した。滝田監督が選んだ、さらなる斬新なテーマ、それは“江戸×天文”。多くの人々が、地球が丸いことさえ知らなかった江戸時代に、星や太陽の観測をし、日本初の暦作りに挑戦した、実在の人物・安井算哲(後の渋川春海)の物語だ。原作は、2010年本屋大賞第1位に輝いた、冲方丁のベストセラー小説『天地明察』。主人公・算哲を演じるのは岡田准一、妻えんには宮崎あおい。
© 2012「天地明察」製作委員会