
北陸のある刑務所の指導技官・倉島英二のもとに、ある日、亡き妻・洋子が遺した絵手紙が届く。そこには、一羽のスズメの絵とともに“故郷の海を訪れ、散骨して欲しい”との想いが記されていた。刑務所に慰問に来た歌手であった洋子とは50歳を目前に結婚し、晩婚だった二人は子供を望まず穏やかで幸せな夫婦生活を営んでいた。15年間連れ添った妻とはお互いを理解し合えていたと思っていたのだが、妻はなぜ生前その思いを伝えてくれなかったのか…。
英二は、妻の真意を知るため彼女の故郷を訪れることにする。妻とともに日本を旅するはずだった自家製のキャンピングカーに乗り、九州へと旅立つ英二。旅を続ける中で出会う様々な人々。彼らと心を通わせ、彼らの家族や夫婦の悩みや思いに触れていくうちに蘇る妻・洋子との心温かくも何気ない日常の記憶の数々。妻の故郷に辿り着いた英二は、遺言に従い彼女の遺骨を故郷の海に散骨する。そのとき英二は、妻の本当の想いに気づかされるのだった。