
月曜日 − 『ユマ』 − ベニチオ・デル・トロ
空港に降り立つアメリカ人のテディ。迎えにきたドライバーの誘いで、海岸通りのマレコンやコロニアル建築、古きよきアメ車に奔放な音楽といういわゆるキューバの一歩奥の庶民の生活を覗くことに。スペイン語ができない彼はただの傍観者だ。彼らの生活に関わることなく、目の前の彼らの“豊かな”生活を眺めていく。バーに連れて行かれても言葉ができないため、出逢いは空振りばかり。そこで彼は唯一会話に乗ってくれた長身の女性をホテルへ誘うが....
火曜日 − 『ジャム・セッション』 − パブロ・トラペロ
クラブのバーカウンターで受け取った酒をあおりながら、ひどく酔っ払って店から出てくる中年男。ハバナ映画祭に出席するためにキューバを訪れた、有名な東欧セルビアの映画監督エミール・クストリッツァだ。雇われたタクシー運転手の男は、なんとか彼を車に押し込んで宿泊先のホテルに向かう。だが、部屋の中でも泥酔したまま倒れており、目も当てられない状態だ。そして映画祭の会場。クストリッツァは大きな拍手に迎えられながら、タキシード姿でステージに上がり“珊瑚賞”を受賞する。だが、これから公式ディナーに送って行くという運転手にこう吐き捨てた。「行きたくない。俺のクソみたいな人生や映画を喜ぶ奴らに会いたくない。二度殺されるようなものだ!」 ようやく丸一日、面倒な有名人に付き合わされた仕事が終わり、運転手は仲間うちのホームパーティーに向かう。クストリッツァもついていくと、運転手は素晴らしいトランペット奏者で、バンドとジャム・セッションを始めた。
水曜日 − 『セシリアの誘惑』 − フリオ・メデム
ハバナで歌手をしているキューバ人のセシリアは、スペインからやって来たクラブ・オーナー、レオナルドと情熱的な1週間を過ごした。そして、明日の昼便でマドリードへ戻る彼から、夏に開催するコンサートのため、彼女をスペインに招きたいという提案を受ける。だが、彼女の心は揺れ動いていた。セシリアには、同棲を続けてきた野球選手の恋人、ホセの存在がある....
木曜日 − 『初心者の日記』 − エリア・スレイマン
パレスチナ人のES(エリア・スレイマン本人役)は、キューバのある指導者のインタビューを行う仕事でハバナにやってきた。インタビューの日時まで手持ちぶさたなESはタクシーをチャーターし、ハバナの町を気ままに見て回る。スペイン語も話せず、現地の友人もいない彼は、「帝国主義に対する革命の同志」であるはずのキューバ人の、実際には享楽的で開けっぴろげな生態を目の前にし、ただ立ち止まり、傍観し続ける.....
金曜日 − 『儀式』 − ギャスパー・ノエ
真夜中、ハバナのビーチで若者たちが音楽をかけながらダンスを楽しんでいる。そんななか、一人の少女、ヤミルスラディのもとに、女の子が近寄ってきた。二人は身体を寄せて踊るうちに気分が高まってキスを交わす。そして翌朝。裸になってベッドに横たわる二人を、ヤミルスラディの両親が怒りに震えながら見下ろしていた。娘にかけられたふしだらな呪いを解くため、両親は娘を呪術師のもとへと連れて行き、古くから伝わる清めの儀式を受けさせる….
土曜日 − 『甘くて苦い』 − フアン・カルロス・タビオ
母親のミルタは精神科医であり、病院での診察以外に週一回テレビにも出演するほどに活躍しながら、一方では家の中でお菓子作りもして家計を支えている。キューバは「いろいろな仕事をして、とにかく生きていく」国なのだ。夫がアル中気味のせいか、もしくは失業中のためにそうなったのか...。彼女は夫に家事を手伝わせ、ムチャをしないようにと怒鳴りながらも絆のかたい家庭を守っている。一方、外で暮らしているセシリアが突然「荷物をとりに来ただけ」と帰宅。「なにかあるわ」と母親独特の勘を働かせるミルタ。しかし彼女が多忙な一日を終えてテレビ出演している間に事件は起きる....
日曜日 − 『泉』 − ローラン・カンテ
今日は日曜、安息の日。だが、海に近いマレコン通りのおんぼろアパートには住人たちを召集するマルタの声が轟く。朝の6時だ、何事だと、寝ぼけ眼が訴えても聞く耳持たずでマルタはがなりたてる。「全員、降りてきて」 しぶしぶ、ぞろぞろ狭い部屋に集う面々。男も女も老人も子供も顔を見合わせ首を傾げる。が、お構いなしで号令がとぶ。「(川の女神)オチュンのためにパーティを開く。部屋に泉を造って聖母を祭る。水を入れ魚を放つ――」 訳のわからぬままに動き始める住人たち。