僕、凄いことに気づいちゃったんです……。
今村と若葉の出会いはビルの屋上だった。2人が出会う少し前、飛び降り自殺をしようとしていた若葉は、死ぬ前に恋人に電話をかけるが、留守電のメッセージを聞いていたのは、彼女の恋人の家に空き巣で入っていた今村とそのボス。「これから死ぬ」という彼女を放っておくことができず、「キリンに乗っていくから!」と、わけのわからないセリフを言って若葉のいるビルへ向かう今村。彼女は自殺を思い止まり、そこから2人は同棲をはじめる。
ある日、今村の空き巣の仕事を見てみたいと同行した若葉。忍び込んだマンションの一室は、プロ野球選手の尾崎の部屋。けれど、今村は野球漫画を読んだり、ソファでくつろいだり、何かを盗む気配はいっさいなし。若葉が金目のものを見つけて帰ろうと促してもなかなか動かない。と、そこへ家主の尾崎に助けを求める電話がかかってくる。若葉と出会ったときと似ている……と、今回も放っておけなくなった今村は、メッセージを残した女の元へ向かうことに。尾崎の代理で助けにいった今村と若葉だったが、その先には思わぬ事態が待っていた──。
意外な事実を知って腹を立てた今村と若葉は、車での帰り道、ポテトチップスを買って食べることに。その時の若葉の「コンソメ食べたい気分だったけど、塩味もいいもんだね。間違ってもらって、かえって良かったかも」という何気ない言葉に、泣きじゃくる今村。なぜ、彼は泣いたのか? そもそも、なぜ、今村は尾崎に執着するのか? すべての理由は26年前、2人の赤ん坊が生まれたあの日にさかのぼり……。若葉は、今村が憧れる兄貴分の黒澤からある事実を聞かされる。