
百戦錬磨の傭兵にして凄腕のハンターであるマーティン・デヴィッドは、タスマニアへのロマンも郷愁もまったく抱いていなかった。あるバイオ・テクノロジー企業の依頼でこの島を訪れた彼の目的は、すでに絶滅したとされるタスマニアタイガーの生き残りを見つけ出し、その生体サンプルを採取すること。この困難極まりない任務を遂行するために、未開の秘境へ足を踏み入れたマーティンは着実に調査を重ね、ベースキャンプ代わりの民家で暮らす女性とその幼い子供たちと心を通わせていく。そんな母子と家族のように触れ合う日々は、他人との関わりを一切拒絶し、ひたすら冷たい人生を歩んできたマーティンの胸の奥底に熱い何かを甦らせていった。
やがてこの仕事への倫理的な疑念に駆られた彼は、秘かに迫り来る脅威との闘いを強いられ、人生最大の決断を迫られていくのだった……。