住田祐一、15歳。彼の願いは、「普通」の大人になること。 大きな夢を持たず、ただ誰にも迷惑をかけずに生きたいと考える住田は、実家の貸しボート屋に集う、震災で家を失くした夜野や圭太たちと、平凡な日常を送っていた。 茶沢景子、15歳。夢は、愛する人と守り守られ生きること。 他のクラスメートとは違い、大人びた雰囲気を持つ少年・住田に恋焦がれる彼女は、彼に猛アタックをかける。疎まれながらも住田との距離を縮めていけることに、日々、喜びを感じていた。
借金を作り、蒸発していた住田の父が帰ってきた。金の無心をしながら、住田を激しく殴りつける父親。さらに、母親もほどなく、中年男と駆け落ちしてしまい、彼は中学3年生にして天涯孤独となる。 自身もまた、両親からの愛を受けられずに暮らす茶沢は、最悪の境遇にもがく住田に激しく共鳴し、彼を必死で励ますのだった。やがて、彼女の気持ちが徐々に住田の心を解きほぐしつつあるとき、その“事件”は起こった。住田のボートハウスに、借金取りが父親の借金の取り立てに現れたのだ。「こんな定番の不幸話じゃへこたれねーぞ! オレは必ず立派な大人になるんだ!」そう叫び、彼らの非情な暴力に立ち向かう住田だったが、その心は限界に達しつつあった。 ほどなく、再び住田の前に父親が現れ、彼にこう言った。「しぶといなぁ。俺、お前のこ と本当にいらないんだよ・・・」 その瞬間、住田の心は決壊し、全ての感情が溢れ出した。気付いたとき、彼の横に横たわっていたのは、父親の亡骸だった。
「普通」の人生を全うすることを諦めた住田は、その日からの人生を「オマケ人生」と名付け、その目的を、自分より悪い人間を見つけ出し、自らの手で殺すことに決める。毎夜、街を徘徊する住田の異変に気付いた茶沢は、彼を救い出そうと奔走するのだったが・・・。
新着映画情報
染谷将太 |
監督・脚本:園子温 |
2011/日本/ヴィスタビジョン(1.85:1)/ドルビーSR/129分 |
未来を失くした少年と、愛にすがりつく少女。 絶望の果てに、二人が見たものとは──?
住田祐一、茶沢景子、「ふつうの未来」を夢見る二人の日常は、ある事件をきっかけに一変。衝動的に父親を殺してしまった住田は、そこからの人生を「オマケ人生」とし、世間の害悪となる‘悪党’を殺していくことに決めた──。
『行け!稲中卓球部』で圧倒的な人気を獲得した漫画家・古谷実が、2001年から2003年にかけて「ヤングマガジン」誌上で連載し、“終わりなき日常”を生きる若者の閉塞感を容赦なく描ききった超問題作「ヒミズ」。この作品の実写化を実現させたのは、刺激的かつ野心的な作風で今、最も目が離せない監督・園子温。主人公を演じる染谷将太と二階堂ふみのふたりは、第68回ヴェネチア国際映画祭で日本人としては初となる最優秀新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)をW受賞。
(c)2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ