秀二はいつも兄の真吾からお金を借りて、映画を撮っている。秀二の映画が陽の目を見ることはほとんどなかったが、秀二は自分の映画と映画の持つ力を信じていた。最近の映画館ではなかなか観られないような映画を自主上映したり、“いわゆるエンターテインメント映画だけではなく、もっとアート映画を観るように”街中で演説をして警察に追われたり、同じく監督を志すナカミチと映画談議をする日々。
ある日、真吾が死んだという知らせを受ける。ヤクザの世界で働いていた真吾は秀二のために組から金を借り、それがもとでトラブルになり命を落としたのだ。何も知らずにいた自分を責める秀二。兄のボスである正木から、真吾が遺した借金が1,000万円を超える額であること、それを2週間以内に返済しなければならないことを告げられ、秀二は途方に暮れる。
借金を返すあてのない秀二は、ヤクザ相手に体を張って金を稼ぐこと――殴られ屋をすることで借金を返す決心をする。殴られる場所は兄が死んだ場所でなければ、兄の痛みを一緒に感じなければ殴られる意味がない、と考えた秀二は、ヤクザ相手に仕事をする陽子と組員のひとりであるヒロシを巻き込みながら殴られ屋を始める――。