天を恨まず、人を咎(とが)めず。
四十にして惑わず、五十にして天命を知る...、
七十にして、心の欲するところに従う。
生涯を賭けて、乱世を正そうとした男の物語。
紀元前六世紀。周王朝は没落を迎えようとし、諸候国が覇権を握ろうと血で血を争う戦いが繰り広げられていた。晋・斉・楚といった大国が隣接している小国、魯(ろ)国の没落貴族の家庭に生まれ育った孔子は、乱世を憂い魯国に仕官した。己の欲せざるところ、人に施すなかれ。民のために因習の撤廃を進言し、自らが作り上げた政治思想を掲げた彼は、魯国に尊厳と希望をもたらしていった。
義を見て為ざるは、勇なきなり。しかし、時代はまだ追いついていなかった。政治的陰謀に巻き込まれ、様々な障壁に阻まれた孔子は、その思想を実現するべく、多くの弟子を率いて、諸国を巡る旅に出た。朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。それは十四年にも及ぶ、生命を賭けた長い道のりの始まりだった・・・。