6歳のユスフは、手つかずの森林に囲まれた山岳で両親と共に暮らしている。幼いユスフにとって、森は神秘に満ちたおとぎの国で、養蜂家の父と森で過ごす時間が大好きだった。ある朝、ユスフは夢をみる。大好きな父にだけこっそりと夢をささやき、夢を分かち合う。
ある日、森の蜂たちが忽然と姿を消し、父は蜂を探しに森深くに入っていく。その日を境にユスフの口から言葉が失われてしまう―。数日経っても父は帰ってこない。ユスフに心配をかけまいと毅然と振る舞っていた母も、日を追うごとに哀しみに暮れていく。そんな母を、ユスフは大嫌いだったミルクを飲んで励まそうとする。そしてユスフは、一人幻想的な森の奥へ入っていく―
新着映画情報
ボラ・アルタシュ |
監督:セミフ・カプランオール |
2010/トルコ・ドイツ/ヴィスタビジョン(1.85:1)/ドルビーデジタル/103分/トルコ語 |
さよならは、心の奥にしまい込んだ。いつか蜂蜜が甘く香るその日まで―
第60回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品。監督はデビューからわずか5作品で異例とも言える計40以上もの賞を受賞した、現代トルコ映画界を代表するセミフ・カプランオール。幻想的な森を舞台に、主人公ユスフの成長を通して、父、母との絆、そして人の心の機微を情感豊かに描く。全編に亘りそのシーン、ひとつひとつが名作童話の断片のような絵画的美しさに満ちている。
ユスフの幼少期を描く本作は、<ユスフ3部作>の完結編。第1部「卵」(07)では壮年期のユスフ、第2部「ミルク」(08)では、青年期のユスフを描いている。成長過程を追うのではなく、未来から過去へユスフという一人の人間の皮をだんだんと剥いてその核心に迫るという構成である。
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