南イタリア、カラブリア州の山深い地方。老いた牧夫が山羊の世話をし、教会を訪れ、毎晩、薬代わりに教会の床の埃を水に溶いて飲み、眠りに就く…。長い間、変わることなくそんな暮らしをしていた牧夫も、やがて死んでいく。
仔山羊が誕生する。仔山羊は最初の一歩を踏み出すが、群れに遅れ、森で溝にはまってしまう。上ることができず、助けを求めて鳴くが、牧羊犬にも誰にも、その声は届かない。群れは仔山羊を残して行く、その運命のままに。ようやく溝から抜け出た仔山羊は、あてもなくさまよい、夜になり、大きなモミの木のもとで眠りにつく。
春、数百年も続く例年のピタの祭りの為に、村人がその大きなモミの木を切り倒しにやってくる。枝を切り払い、がっしりした幹を村へと運び出す。村の広場にこの木を立てるのだ。祭りが終わると、モミの木は炭焼きに売られて行く。
小さく刻まれ、組み上げられたモミの木の小山。それ自体が炉の役割を担う、その小山は藁と粘土に覆われて、点火され、煙を吐き出す。世代から世代へと古くから伝えられる技術によって、生きている植物である木は、不活性の鉱物=人々の暮らしを支える木炭に生まれ変わる。
こうして人間、動物、植物、炭、4 つの命がサークルを描き続けるー。
新着映画情報
『四つのいのち』
原題:Le Quattro Volte
配 給 : | ザジフィルムズ |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2011年04月30日 |
映画館: | シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 |
ジュゼッペ・フーダ |
監督:ミケランジェロ・フランマルティーノ |
2010/イタリア・ドイツ・スイス/ヴィスタビジョン/ステレオ/88 分 |
地球が丸いのは、みんな繋がっているから。
人間、動物、木、炭。すべての生命が形を変えながら、地球に描く、おかしくも美しい大きなサークル。本作には一切セリフがない。風のざわめき、動物たちの鳴き声、放牧の山羊の鈴の音、昔と変わらぬ暮らしを営む人々が生み出す生活音だけによって、豊饒なドラマが繰り広げられていく。
ドキュメンタリーさながらのリアルさは、俳優たちが、老いた牧夫を演じるジュゼッペ・フーダを筆頭にすべてカラブリアの村々に暮らす実在の人々だから。唯一プロの俳優は、驚異的な演技でカンヌ“パルムドッグ賞”を受賞した、牧夫の飼う犬のみ。監督は本作が長編第二作目のイタリアの新しい才能、ミケランジェロ・フランマルティーノ。
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