ノルマンディーの海岸沿いに住む12歳の少年アントワーヌは、髪を切るのが大好きだった。豊満な美女のシェーファー夫人がひとりで切り盛りする理髪店に足繁く通い、洗髪の際に触れる彼女の胸の膨らみや鼻孔をくすぐる体臭にうっとりするのだった。
ある日、シェーファー夫人の白衣の隙間から見える大きな乳房に興奮し茫然自失となったアントワーヌは、家族の前で「女の床屋さんと結婚する!」と宣言する。驚いた父は思わず平手打ちするが、部屋に引きこもってしまった彼に謝罪し、将来は好きなようにしなさいと語る。このとき、彼は髪結いの亭主になることを固く誓う。
大人になったアントワーヌは、ある床屋で“人生で愛する2人目”の美しい理髪師マチルドに出会う。「彼女こそ生涯の伴侶」と心に決めた彼は客として店に入り、散髪の途中で「結婚してください」と求婚する。彼女は戸惑いつつもそれを無視し、散髪を終わらせるや否や彼を店の外に送り出す。
3週間後、さほど髪も伸びていないアントワーヌは再び店を訪れる。まるで一見の客を相手にするかのように彼の散髪をした後、マチルドは「あなたの妻になります」と答える。彼の長年の夢は叶い、ふたりは床屋の2階に一緒に暮し始める。床屋には日々、個性溢れる客たちが訪れ、ふたりの幸福は永遠に続くかと思われたが…。
新着映画情報
『髪結いの亭主 デジタル・リマスター版』
原題:Le Mari de la Coiffeuse
配 給 : | IMAGICA TV |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2011年01月08日 |
映画館: | ユーロスペースにてロードショー、全国順次公開 |
アンナ・ガリエナ |
監督:パトリス・ルコント |
1990/フランス/シネマスコープ/モノラル/82分 |
愛に溺れる。 前よりも、深く。
1980年代末から始まったミニシアター・ブーム。都内とその近郊でたった1館だけで上映する映画が、億単位の興行収入を上げるという一大ムーブメントが、映画業界を席巻。「八月の鯨」「ベルリン・天使の詩」「モーリス」「ニュー・シネマ・パラダイス」など90年前後に大ヒットを記録した作品は、いまだ記憶に新しい。そんなブームの中、それまでほとんど日本では紹介されたことがなかったフランス人監督、パトリス・ルコントの「髪結いの亭主」が91年12月、渋谷のル・シネマで公開され、6.6万人を動員し興行収入1億円以上を上げた。そのヒットを機にルコントの旧作も相次いで公開となり、そのフェティシズム溢れるエロティックな描写が男女問わず話題となり、彼は一躍人気監督となった。
本作で亭主を演じたのは50年代から活躍しいまだに現役で、ルコント作品にも数多く登場する名優ジャン・ロシュフォール。妻であり理髪師を演じるのは、4ヶ国語を話し舞台を中心に国際的に活躍するローマ出身のアンナ・ガリエナ。ルコントを支えるスタッフ陣として、「ピアノ・レッスン」やピーター・グリーナウェイ作品の音楽でも有名なマイケル・ナイマンや、最近ではハリウッド作品の撮影も手がけるエドゥアルド・セラらが参加している。
(c)1990 LAMBART Productions - TF1 Films Production