幕末〜明治の激動の時代、流されながらもたくましく生きる、猪山直之と家族たち。
御算用者(ごさんようもの)として、代々加賀藩の財政に携ってきた猪山家八代目・直之。そんな彼は、時に同僚からですら「算盤(そろばん)バカ」などと言われる男だった。
時は江戸時代後半。天保の大飢饉などもあり、加賀百万石と謳われた藩も財政状況は芳しくない。加えて当時の武家社会には、身分が高くなるとそれに応じて出費も増えるという構造的な問題があった。直之は家財道具を処分し、借金の返済に充てることを決断。家族も一丸となってそれに協力することを約束する。近所の者や同僚などからの好奇の目にさらされながらも、倹約生活を実行する猪山家の人々。とりわけ妻のお駒は、直之の一番の理解者として、明るく献身的に家を切り盛りしていくのだった。