大人になるしかなかった子供と、子供らしさを禁じられた子供。 彼らを救ったのは、愛でも、神様でもなく、〈たった一本の映画〉だった―。
1982年、イギリス郊外。11歳の小学5年生、ウィル・プラウドフットは、父親のいない家庭で母親、妹、おばあちゃんと暮らしている。彼はプリマス同胞教会の厳格な道徳律のもと育てられ、音楽や映画、テレビなど、同年代の子供たちが夢中になっているものすべてを禁じられている。おまけに最近、母親に接近しているジョシュアという教会の男が家によくやってくる、なんだか息苦しい毎日。そんなウィルの唯一の楽しみは、思いつくまま自由に、オリジナルのイラストやパラパラマンガをノートや聖書に描くことだった。
ところが、ある日のこと。校内の不良少年リー・カーターと知り合ったウィルは、一気に彼の強烈な世界に引き込まれていく。学校きっての問題児で、いろんな悪さを平気で働くカーターだが、やはり父親のいない家庭で育った彼は、留守がちな母親に代わり横暴な兄の朝食も作る自立した少年だった。気弱で内気なウィルと、乱暴で悪ガキのカーター、ふたりの友情が育つのに時間はかからなかった。
やがてウィルの日常を決定的に変える出来事が起こる。それは老人ホームを営むカーターの家で、生まれて初めて観た一本の映画―『ランボー』のビデオだった。ウィルはシルベスター・スタローン演じるベトナム戦争帰還兵の傷だらけのヒーローに、人生最初で最高の衝撃を受ける。そして「僕はランボーの息子だ!」と名乗り、ランボーに成り切ったスタイルでカーターのもとに登場。兄貴ローレンスのビデオカメラで自主映画を撮り始めていたカーターの作品に出演することを宣言する。主演はウィル、監督はカーター。こうしてふたりのエキサイティングな映画作りがスタートした・・・。