とある古びた一軒家で食事の仕度がはじまっている。鍋からはふつふつと、鶏がらスープのいい匂いが漂ってくる。ルイは叔母のトバちゃんと二人暮らし。トバちゃんは、ルイを産んですぐに亡くなった姉の代わりに、女手ひとつで彼女を育ててくれたのだ。そのトバちゃんが還暦を前に突然恋に落ちて出奔。ひとり残されたルイの家に、見知らぬ男がやってくる。田中十二夫と名乗るこの男、勝手に庭に入り込みキャンバスを広げて絵を描いている。一度はルイに追い払われるが、数日後、ノホホンと弁当など下げてやってくる。ところがこれが、めっぽう美味しい。
そんなある日、雑誌社に勤める親友の奈々子に誘われ、人気作家の接待ディナーに同席する。作家の傍若無人ぶりにあきれるルイだが、隣に座る若い男、康介にすすめられた「冷製桃のスープ」に思わずうっとり。ルイを家まで送ってきた康介は、庭から出てきた十二夫をルイの父親と間違えてしまう。そして十二夫の意外な一言「そのお父さんからお願いがあるんですが…今晩泊めてください」。
翌日ルイが仕事から戻ると、なぜか十二夫と康介がキッチンで何やら楽しげにご飯を作っている。夕餉がはじまって、ルイの鶏がらスープを味わった康介は、「体中がお祭り騒ぎ」。いいなあ、ここ。住んでみたい、という康介に、住もうよ、と十二夫。あれよあれよという間に、二人はルイの家に引っ越してくることになったが・・・。
新着映画情報
坂井真紀 |
監督:瀧本智行 |
2010/日本/ヴィスタビジョン(1:1.85)/DTS-SR/119分 |
恋人や家族や友人に対する愛とも、ちょっと違う。 そこには、いとおしさと、哀しみと、可笑しさに満ちた愛があふれている。
三十路も半ば過ぎて独身。かといって何かに焦る気配もない、ごく平凡な主人公ルイの日常に、さざなみのごとく湧き起こるありえない出来事ーー。人間の可笑しさと哀しみをユーモア溢れるタッチで描いた阿川佐和子の同名小説が、「いつか読書する日」の青木研次の脚本、「イキガミ」の瀧本智行監督の手によって、鮮やかな光と音とともにスクリーンに甦った。
たよりなげでいながら、飄々としたたくましさを併せ持つルイを演じるのは坂井真紀、還暦前に一途な愛に突っ走るトバちゃん役に加賀まりこ。同居人となる怪しげな画家に藤竜也、もう一人の同居人・康介に「愛のむきだし」の西島隆弘。
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