郊外に居並ぶ木造平屋建ての市営住宅。その冴えない一室で、英則と奈々瀬は軟禁状態とも言うべき奇妙な共同生活を送っている。夜な夜な屋根裏に潜み、隙間から奈々瀬を覗いている英則。一方、垢抜けない丸眼鏡にスウェット姿の奈々瀬は、兄でもない英則を「お兄ちゃん」と呼び、彼に自分の姿態を覗かせている。二段ベッドの上下で眠る二人の間にセックスはなし。彼らを結び付けているのは約二十年前に起きたある出来事―。それ以来、英則は奈々瀬に対するこの世で最も惨い復讐方法を考え、奈々瀬は自分に対してこの世で最も惨い罰が下されるのを待ち続けているのだ。愛情よりもずっとずっと確実な繋がりを求めて、歪んだ関係を続ける英則と奈々瀬。
ところが、一組の夫婦が近所に越してきたことにより、二人の閉塞した生活にやがて微妙なズレが生じていく―。
新着映画情報
浅野忠信 |
監督:冨永昌敬 |
2010/日本/ヴィスタヴィジョン/DTSステレオ/97分/PG12 |
覗く男と覗かせる女と、なんやかんやで巻き込まれた 夫婦の哀しくも可笑しいある意味ラブファンタジー・・・
人間の可笑しさと哀しみを描く、気鋭の演出家・作家の本谷有希子。07年の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」に続く、本谷作品の映画化。”覗く男”英則には、今年映画デビュー20周年を迎える浅野忠信、対する”覗かせる女”奈々瀬には、蜷川幸雄らの舞台で活躍する美波。彼らの近所に引っ越してくる一組の夫婦、妻のあずさ役には小池栄子、あずさの夫・番上役には「十三人の刺客」の山田孝之。監督は、「パビリオン山椒魚」「パンドラの匣」などで、その多彩な映画技巧で天才の名を欲しいままにしてきた冨永昌敬。本作では、奇天烈な四人の男女が織り成す複雑怪奇な人間劇を、六畳間の息詰まる空間にねっとりと映し出している。
(c)2010『乱暴と待機』製作委員会