守るための正義か、救うための正義か。
ニューヨーク、ブルックリンにある低所得者用の団地、“BK公営住宅”。ギャングによる犯罪や麻薬取引、誘拐事件が日常茶飯事のこの地区で、警官による強盗事件が発生した。被害者は罪のない黒人青年だった。この事件はマスコミの注目を集め、ニューヨーク市警は激しい非難を浴びていた。警察上層部はその状況を打破する為に警察のイメージアップを図るべく、犯人の逮捕を急ぐと共に各方面で取締りの強化を始めた。しかし、この取締り強化策はこの地区で働く3人の刑事の心の闇を浮き彫りにする事になる。
勤続20年のベテラン警官・エディは退職まで1週間を残し、ただ無難に過ごしてきた自身の人生に空虚感を抱えていた。決して目立たず、目の前で犯罪が起ころうとしていても管轄が違えば動かない、そんな警官人生を送ってきた彼に、最後の仕事として任されたのは、皮肉にも警察の取締まり強化策の一環として行われる事になった犯罪多発地区における新人教育であったー。
信仰深く家族想いの麻薬捜査官・サルは愛する妻と5人の子供に囲まれて暮らしていたが、病気の妻と広い家を欲しがる子供の為に新しい家の購入を約束してしまう。しかし、警官の安い給料では頭金の工面もままならなかった。そんな彼は麻薬捜査中、大金を目の前にし自らの正義感の中で揺れていたー。
“BK公営住宅”を基盤に持つギャング組織に長年潜入を続けるタンゴは、潜入捜査官という仕事柄、妻に会うことも出来ず、遂には離婚を突きつけられてしまう。成果を挙げてもなお昇進出来ず、自らの人生を犠牲にし続けるこの仕事に精神的にも限界を感じていた。そんな時、上層部は警察の威信を市民にアピールする為にタンゴにある任務を与える。その任務とはタンゴの命の恩人でもあるギャングのボス、キャズをおとり捜査で逮捕することだった。上層部はキャズの逮捕と引き換えに、長年の夢であった昇進を彼に約束するー。
目の前の現実と自らの正義感の狭間で揺れる3人の運命は、奇しくも警官の起こした強盗事件により思わぬ形で交わる事になる。決して交わるはずのなかった3人の刑事、それぞれの正義が交錯した先には衝撃のラストが待っていたーー。