“妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・”
リスボン発、南の保養地アルガルヴ方面への長距離列車。 見知らぬ夫人と隣あわせたマカリオは、自分に起きた衝撃的な事件を語るー。
マカリオは会計士。叔父フランシスコが経営するリスボンの高級洋品店の2階で仕事を始めた。ベランダごしに、通りの向かいの家に白いカーテンの窓が見える。 宵を告げる鐘が鳴る頃、窓辺にブロンドの少女が。手には中国風の扇。その過激なまでの美しさにマカリオは恋をした。“扇にではなく、彼女に恋したのでしょう?”と列車の夫人。
やがて友人を介してその少女、ルイザに出会い、結婚の許しを得ようとするまでに進展するが、叔父フランシスコは頑として結婚を許さず、マカリオはクビになって、貧しい借り部屋に暮らしはじめる。職を探すが、叔父の知り合いには次々断られて窮し、ルイザには今は求婚できなくなったが、大きな取引があると嘘をついてなだめた。そんなところに、派手なカンカン帽の旧知の男から、貿易商がカーボヴェルデに行って働く男を探していると聞いて、マカリオは即座に受ける。アフリカ西端の、むかしポルトガルの植民地だった島々の国だ。仕事は過酷だろう。 マカリオは、ルイザに別れを惜しみながら出発し、彼女への愛に焦がれながら懸命に働き、一財産を築いてリスボンに帰還する。 マカリオはルイザの母・ヴィラサ夫人を訪問し、晴れて結婚の許しを得る。“よかったこと”と 列車の夫人は祝福。しかし、“それがそうでもなかったんです”・・・。