
土木作業員の清水祐一は長崎の外れのさびれた漁村で生まれ育ち、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。車だけが趣味で、何が楽しくて生きているのかわからない青年。佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代は、妹と2人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日を送っていた。
「本気で誰かに出会いたかった…」 孤独な魂を抱えた2人は偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。しかし、祐一はたったひとつ光代に話していない秘密があった。彼は、連日ニュースを賑わせていた殺人事件の犯人だったー。
「もっと早く出会っていれば良かった…」 そんな祐一の自首を止めたのは光代だった。殺人犯との許されぬ愛…。生まれて初めて人を愛する喜びに満たされる光代は、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かう。やがて地の果てとも思える灯台に逃げ込んだ2人は幸せなひとときを迎えるが、その逃避行が生んだ波紋は被害者の家族、加害者の家族の人生をも飲み込んでいく・・・。