20世紀初頭、フランス・パリ郊外サンリス。セラフィーヌは家政婦として働き、食べることも儘ならない貧しい暮らしを送っていた。彼女の孤独な日々を支えたのは、草木に話しかけ、聖歌を歌い、そして手作りの絵の具で、花や葉、果実の絵を描くことだった。
そんな彼女を見出したのは、素朴派の画家アンリ・ルソーを発見し、天才ピカソをいち早く評価したドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデ(1874-1947)である。純粋無垢な彼女のキャンバスに描かれた、色鮮やかで神秘的な花々。ウーデはその唯一無二の世界に心を奪われ、彼女に惜しみない援助をするようになった。セラフィーヌは、ウーデの支援をえて、個展を開くことを夢に絵を描き続ける。しかし第一次世界大戦が激化し、敵国の人となったウーデはフランスを離れざるをえなくなる。
十余年経って、二人は再会。彼女は再びウーデの支援をえて、数々の傑作を描いていく。そしてついに夢が実現しようという矢先、1929年の世界恐慌が二人にも大きな影響を及ぼす。世界恐慌の煽りを受け、ビジネスが滞り始めていたウーデは、浪費を繰り返すようになっていたセラフィーヌを見かねて、「私は金を払う事はできない。絵も売れず、個展も延期する」と告げざるをえなかった。セラフィーヌは激しく動揺し、執拗にウーデをののしり、その心は次第に壊れていく。そしてある日、ついに彼女はある行動にでる─。
新着映画情報
ヨランド・モロー |
監督:マルタン・プロヴォスト |
2008/フランス・ベルギー・ドイツ/ヴィスタビジョン(1:1.85)/SR・SRD/126分/フランス語・ドイツ語 |
花に話しかけ 木に耳をすませて 心のままに、私は描く。
2009年、フランス映画界の祭典セザール賞で、並みいる話題作を退け、ある女性画家の生涯を描いた映画が、最優秀作品賞など最多7部門を独占した。彼女の名はセラフィーヌ・ルイ(1864-1942)。フランスに実在した素朴派の画家で、その生涯は貧しく孤独だったが、彼女の描く鮮やかで幻想的な絵は、観るものの心を強く惹きつける不思議な力を持っていた。切ないほどに無垢な心と、危ういほどに激しい、“描くことが生きること”であった彼女の、美しく純粋な人生に、世界中が感動、国内賞のみならず2009年度ロサンゼルス批評家協会賞主演女優賞、2010年度全米批評家映画協会主演女優賞など、世界各国の映画祭で多数受賞し、フランス本国では、動員80万人を超える大ヒットを記録、同時に行われたセラフィーヌの回顧展も大盛況となった。
(c) TS Productions/France 3 Cinema/Climax Films/RTBF 2008