![ストーリー](http://www.movienet.co.jp/images/movie_icon_story.gif)
大手家電メーカーの経営企画室室長、筒井肇は、仕事に追われる日々を送っていた。50歳を目前に、取締役への昇進を告げられる中、課せられたのは工場整理という名のリストラ、その対象は同期入社の川平が工場長を務める工場だった。合理化を説き、本社への異動を薦める肇に対し、川平は「俺がやりたい仕事は物作りだ」と譲らず、退職の道を選ぶ。川平の“やりたい仕事”という言葉は、肇の心に、何かを残していった。
妻の由紀子は、長年の夢だったハーブショップを開店し、多忙な毎日を送っている。肇との距離は広がり、会話もほとんどなくなっていた。一方、就職活動中の娘・倖は、自分の夢が見つからず、悶々としていた。肇は、そんな倖に「一体この先、どうするつもりなんだ」と急かす言葉をかけ、さらに倖を苛立たせてしまうのだった。
ある日、故郷の島根で一人暮らしをしている母・絹代が倒れたという連絡が入った。急いで田舎に帰ったものの、軽度の心筋梗塞だと聞き、翌日には東京へ戻る、肇と由紀子。仕事ばかりの両親に、倖は「婆ちゃんより大切な仕事なんて無い!」と反発するが、肇は取り合わない。そんな折、川平の交通事故死の知らせが突然入る。さらに母に、悪性の腫瘍が見つかったことを医師から告げられ、肇はひどく動揺する。
呆然と帰った故郷で、家業のしじみ漁に励む同級生の了の誇らしげな姿や、都会とは違う田舎のゆっくりとした時間の流れを全身で感じる肇。がらんとした実家で、肇はかつて必死に集めていた電車の切符を見つける。母親が未だ大切にとってくれている切符・・・。肇は子供の頃、一畑電車の運転士になるのが夢だったことを思い出す。
母親には、親孝行さえしていない。妻や娘とのすれ違ってばかりいる。川平は、家族を残して突然、逝ってしまった。俺はこのまま、人生を終わらせてしまうのか。目前のことに追われ、やりたいことに挑戦さえしていない。肇は会社を辞め、一畑電車の運転士採用試験を受ける決意をするのだった・・・。