世界に誇る川端文学を、新進気鋭の四人の監督が綴る、美しくもエロティシズム溢れる崇高な映像詩集
第1話「笑わぬ男」 (原作:『笑わぬ男』『死面(デスマスク)』)
路地裏のアパートにある若い夫婦が暮らしていた。夫は売れない作家。病の床に臥している妻は自分の死期が近いとを感じているのか、夜毎「足が淋しい」と呟きその細くなった白い足を擦らせていた。「桜が見たい」という妻のために男は桜が咲き誇る裏山へと向かう。
第2話「有難う」 (原作:『有難う』『朝の爪』)
私婦として生きている菊子は毎晩違う男と枕を並べながら、いつも故郷で出会った、今はもう逢う事の無いある青年の事を思いかえす。青年は、乗り合いのバスの運転手で、(ありがとさん)と呼ばれている青年だった。道すがら、バスの中から、馬車にも大八車にも馬にでも「ありがとう」と声をかける(ありがとさん)。菊子はまだ幼い時分、この(ありがとさん)のバスに揺られ町へ売られて来たのだった。ちょうど、桜の咲きほこる季節に。
第3話「日本人アンナ」 (原作:『日本人アンナ』)
ある寒い日、ロシア人の少女アンナに財布を掏られてしまう。アンナは毎晩街の映画館でロシアの歌を歌っている。可憐なアンナに魅せられた私は、彼女の暮らす木賃宿をつきとめ、隣の部屋へ通い、夜な夜な襖の奥からアンナの姿を覗いていた。そんな夜が幾日か続いたある朝、アンナは町から忽然と姿を消す。翌年の春、満開の桜の下でアンナに良く似た美しい少女と出会い・・・
第4話「不死」 (原作:『不死』)
来る日も来る日も同じ木の下で凧をあげ続ける新太郎。ある日、街の雑踏の中に今は亡きかつての恋人みさ子の姿を見つける。二人は手を取り合い桜の木へと歩き始める。そこはかつてみさ子が亡くなった場所だった。ようやく恋人に再会することが出来た新太郎は、満開の桜の木の下で凧をあげる。