1992年、イリノイ州。マーク・ウィテカーの人生は、順風満帆だった。名門大学を卒業し、農業関係の大企業ADMに就職。着々と出世し、33歳で重役となり、コーンから“リジン”というアミノ酸系食品添加物を製造する世界最大規模の工場を任される。私生活では、愛する妻のジンジャーと子供たちに囲まれていた。
そんな彼の人生を変えたのは、工場で発生中のウイルス。それによって生じる毎月700万ドルの損失を「何とかしろ」と副会長のミック・アンドレアスに責められる。ウィテカーは、ウイルスを仕込んでいる日本の大企業のスパイから、1000万ドル払えばやめると脅迫されたと報告する。ミックはFBIに介入を依頼、まずはウィテカーの自宅の電話に録音機を仕掛けることになる。
訪れたFBI捜査官ブライアン・シェパードに、爆弾発言をぶつけるウィテカー。ADMは、リジンをはじめ自社の全製品で、違法な価格協定をおこなっているというのだ。この日この瞬間から、ウィテカーは、巨大企業の内部告発者となった。
だがなぜ、エリート社員が内部告発などするのか? シェパードの疑問に、ウィテカーは、自分は元々技術畑の人間だから、ビジネスのための嘘や不正が許せないのだと語る。しかし、そんな熱い言葉もすぐに忘れる。ウィテカーは気分屋だ。「10万ドルの昇給を提示された」ことを理由に内部告発を“キャンセル”しようとする。
「君が協力を断わったら、別の誰かが協力し、君は被告になる」。辛抱強いシェパードの説明に、ようやく事態の深刻さを呑みこんだウィテカーは、すべてを告白して協力すると約束する。手始めの告白はなんと、「日本のスパイは作り話」だった。
1993年から94年にかけて、ウィテカーは精力的に世界を駆けまわる。東京、中南米、パリ、カリフォルニア、シカゴ、ハワイ...、表向きは有能なビジネスマン、裏の顔は会議を隠し撮りするスパイ。その“スパイごっこ”が気に入った彼は、自分は007の倍は頭のいい秘密諜報部員0014だと大真面目に胸を張る。
1995年、ウィテカーの働きで証拠はそろい、ついにADMの強制捜査の日がやってきた。まるでピクニックに行くようにはしゃぐウィテカーは、上層部が捕まれば、自分が社長になれると信じていた。
巨大企業の不正行為に、マスコミは一斉に飛びつく。内部告発者のウィテカーは一躍時の人に。そんな時、ウィテカーはシェパードに、あり得ないことをあり得ないタイミングで告白する。ADMの重役たちと一緒に、彼自身も日常的にリベートを受け取っていたというのだ。しかし、ウィテカーには、実はまだまだたっぷりと、秘密に嘘に、隠しごとがあった・・・。
新着映画情報
『インフォーマント! 』
原題:The Informant!
配 給 : | ワーナー・ブラザース映画 |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2009年12月05日 |
映画館: | 恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー! |
マット・デイモン |
監督:スティーブン・ソダーバーグ |
2009/アメリカ/シネマスコープ/108分 |
FBIを欺き、アメリカを混乱に陥れたある企業内部告発者の 嘘で作った人生の、本当の物語
その舌一枚で、アメリカを大混乱に陥れた男がいる。マーク・ウィテカー、名門大学を卒業し、33歳の若さで大企業の重役に上り詰めたエリートだ。
スティーブン・ソダーバーグがこの実在のアンチヒーローに挑戦、一方的な批判や援護の視線を捨てて、真正面から彼の人物像に迫る。マーク・ウィテカーに扮するのは、「ボーン」シリーズのマット・デイモン。大企業の不正というシリアスなテーマでありながら、思わず笑ってしまう憎めないキャラクターを、肉体まで改造して熱演した。21世紀の映画界を担うふたりのフィルムメーカーが、善と悪、その間に横たわるリアルなグレーゾーンを、新しいエンタテインメントに昇華させることに成功した。
(c)2008 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.