母子家庭で育ち16歳になる亮は、田舎町の粗末なアパートでひとり暮らし。入院中の母を抱えながらも、コンビニのアルバイトで生計を立ててきたが、長引く母の闘病生活で家計は圧迫され日々の食事すら満足にできなくなっていた。今日もバイト先のコンビニでレジをごまかし、おにぎりやサンドイッチを持ち帰り空腹を満たす日が続く。そんな中、同僚の木澤も亮を気遣うが誰も彼の孤独を埋める事はできなかった。
夏休みのある日、レジのごまかしが店長にみつかり、亮はアルバイト先をクビに。生活の糧を失い、やりきれない思いで、ひとり秘密の場所で父と幼い頃の自分との写真をみつめる。それは亮にとって現実から目をそらす事のできる唯一の時間だった。
頼るあてもなく入院中の母のもとを訪れるが、希望を失った母は父への不満をぶつけるばかり。やがて母が亡くなり、病院への支払や葬儀代の工面という現実に追い込まれた亮の絶望と不安ー。そして、亮は自らの手で母を葬る事を決意する。儀式のあと、亮はひとり東京へ向かう。父に会うために。
新着映画情報
小林優斗 |
監督・脚本:小林政広 |
2009/日本/ヴィスタビジョン/104分 |
本作「ワカラナイ」は小林政広監督による21世紀の「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー監督)とも言うべき作品で、主人公の少年「亮」を17歳の新人、小林優斗が演じている。
映画は、母親を病気で亡くし、医療費も葬儀代も払えず、そして自分自身が食べる事さえ困難な貧困の中を生きていくしかない現実と向き合う少年をリアルに、時にファンタジックに描く。社会から見放された少年の行動の全てを、観察するように、時には見守るように、ドキュメンタリー映画のような距離を保ちながらカメラはとらえていく。